『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。FC加盟で学び、独自業態を展開さらに「魚業態」を開発し成長の展望を拓く「ジュネストリー」の秘訣第2回(この連載は計2回)ジュネストリーの「均タロー」は、2026年1月末現在で16店舗(うちFC4店舗)展開している。これらの特徴は、店舗の布陣が広域に及んでいる、ということである。https://junestry.com/shop/そもそも1号店が、東京・下北沢で、2号店は、さいたま・大宮である。同社ホームページの店舗一覧を見ていて、続々と出店している各店舗の立地の因果関係が読みにくい。これについて、同社代表の東明遼さんはこのように語ってくれた。「独立開業した当初は、自分の地元の近くで『友達が飲みにきてくれたらうれしいな』という感覚でした。しかしながら、だんだんと『地元という理由だけでは勝てないな』と思うようになりました。『店の管理が楽』という理由でドミナント出店を行うのではなく、勝つためには、どのような形で展開するべきか、と」このようなことに気付いたのは、コロナに入ってオープンした「鶏ヤロー」の練馬店を手掛けたときのことだ。この物件は20坪で家賃が22万円。東明氏が地元で営業していた平和島のお店は9坪で30万円。そこで、お店の坪数を家賃のバランスがとても重要であると考えた。現在、東明さんにとって新しい物件情報は、取引先のメーカーや業務用酒販店からいただくことが多いが、以前は、東明さん自身が、遠方にある繁盛店の情報を聞きつけて、その街を尋ねてお店や街をリサーチしたという。「均タロー」の店舗が広域に及んでいるのは、このような理由からだ。筆者が、東明さんに「店舗が広域に及んでいると、社員の人にとって、お店に赴任するのが面倒だと思われるのでは」と質問したところ、このように答えてくれた。「弊社の人材は、『僕の知り合いの知り合い』という関係で入社してくれて、お互い信頼関係が厚く頑張ってくれます。遠方の店にも店長として着任してくれています。このような店の場合、従業員のシフトコントロールや食材の管理がよりシビアになります。ですから、弊社の場合この分野が鍛えられていて、店の強さになっています」客単価3400円「魚業態」で新しい客層を捉えるジュネストリーでは2025年10月、千葉・柏駅から徒歩10分の場所に、同社の新業態となる「魚(ぎょ)えもん」をオープンした。この物件より100m離れたところに「鶏ヤロー」本部の「鶏ヤロー」がある。そこで東明氏は、「ここで新しいことをやってみよう」と構想を練った。ひらめいたことは「均一価格」で、「魚」にチャレンジすること。鳥貴族の料金均一が、かつて「280円」であった当時、この価格に対して魚で戦うことは無理であったが、現在の鳥貴族は「390円」である。「これだと弊社が『魚の均一価格』で挑戦しても十分に戦うことができるのでは」と。そこで、刺身を「439円」の均一価格にした。柏の「魚えもん」は50坪の店で、初月に1300万円を売った。それは、初月の土日のランチタイムに20万円。ディナータイムに30万円を売ったことが、これらの高い売上の基礎となった。想定した客単価は3000円であったが、いまは3400円となっている。「魚」によって、客層も広がった。同店は駅から離れているが、住宅街の入口に位置している。客席はカウンター席、テーブル席だけでなく、掘りごたつ式の小上がりを設けて、すだれによって個室の雰囲気をつくるといった多様な構成にしている。このような仕組みがあることから、土日にはファミリーの利用が定着するようになった。店頭近くのカウンター席に加え、奥にテーブル席と小上がりを設けて、ファミリーの利用も獲得しているメニューにも工夫がみられる。同店の一番「推し」のメニューは、一皿「439円」の刺身で、ボリュームは50g。複数人数で来店すると刺身の組み合わせを楽しむことが出来る。おつまみとして「推し」の「鉄板鶏もも焼き(200g)」や「やみつきあさりの山椒揚げ」、さらに食事として「炊きたて!とり釜めし」も、同じ「439円」でラインアップしているこのように店舗の立地、客席やメニュー構成によって、同社の成長を支えてきた「Z世代の居酒屋」とはまったく異なる領域のお店をつくり上げている。「ビール込み」の飲み放題を設けて、利用動機を高めている既存の広域に及ぶ立地が活性化する気配「魚えもん」を発案した、そもそもの背景について東明氏はこう語る。「僕はこれまで低価格業態をやってきて、なんとなくこの業態の限界を感じていました。『できたら値上げをしたい』と。それができないのであれば、弊社の中に別軸を設けるべきだと。それが『魚えもん』となって、良い営業をしています」刺身の中でも人気のメニューを「439円」の均一価格で提供しているそして、この2月5日、JR新橋駅の近く、徒歩5分の場所に「魚えもん」の2号店をオープンした。同店は地下にあり、50坪の規模で、個室を3室設けている。これからは勤め人や、法人の利用でにぎわうことが予想される。同社は「鶏ヤロー」と加盟店として、低価格業態の仕組みを学び、「2980円食べ飲み放題」を備えたオリジナル業態「均タロー」でワンランク上の領域を切り拓き、さらに「魚えもん」で低価格に流されない、オリジナル業態をつくり上げた。これからは「均タロー」と「魚えもん」を同一の場所に出店できる。「均タロー」単一で展開していた当時は、これのみでドミナント展開を行うことが出来なく、また生産性を求めて、広域で展開することを容認してきた。しかしながら、ジェネストリーの中に客単価3400円の「魚業態」が加わることによって、客単価2400円の「Z世代の居酒屋」に加えて、「ファミリー」も「サラリーマン」も来店できる領域を構えることが出来た。これによって「地元での営業」も「ドミナント展開」も展望できるようになった。これまで「均タロー」単一で営業してきた、広域に及ぶそれぞれの立地で、「魚えもん」を出店することによって、これらの立地はより活性化していくことであろう。筆者は、東明さんが抱えていた「低価格路線に対する不安感」が、今回ベストな形で新しい道を切り拓いたものと捉えている。階段状になった器を利用した「魚えもん刺身盛り合わせ」858円は、食事の場を盛り上げてくれる