『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について綴る。新たな売上アップと企業成長の仕組みを築くゆで太郎システム(本社/東京都品川区)全社員370人の中で外国籍人材が200人、これらを進める狙いとは第2回:特別コラム(この連載は計2回)前回、5月8日(木)公開の記事では、株式会社ゆで太郎システム(本社/東京都品川区)が展開するそばのチェーンの「ゆで太郎」に加えて、新たに「もつ煮定食」をメインとする「もつ次郎」を開発して、「ゆで太郎」と合体して「ゆで太郎もつ次郎」というダブルブランドを展開。この業態が「ゆで太郎」単体当時に対して売上が1割以上伸びている、ということを述べた。一方同社では、人材採用にも業界に先駆けて新しい試みを行なっている。それは、外国籍人材を積極的に採用していることだ。同社の正社員総数は370人で、そのうち外国籍人材が200人を占めるようになった。これらの人材は熱心に能力アップを図り、特定技能2号の取得者は75人となっている。これらの展望について同社代表の池田智昭氏に取材をしたことから、以下に記事をまとめた。外国籍人材200人のうち特定技能2号が75人ゆで太郎システム代表の池田氏は、SNSでの発信を熱心に行なっている。発信元は自身の「池田智昭」ともう一つの「株式会社ゆで太郎システム」の2つである。前者は池田氏が世相について意見を発信しているもの。後者は、同社の取り組みについてである。どちらも、池田氏の深い洞察力がうかがわれるが、特に後者の方は、同社の先験的な取り組みが多岐にわたって論じられて、自由闊達な社風がうかがわれる。この中で、外国籍の社員の雇用を進めていることを盛んに発信している。冒頭で述べたとおり、同社の外国籍人材の数は、日本国籍の人材を上回っている。そして、同社の外国籍人材の中で、特定技能2号を取得している社員が増えている。特定技能1号の取得者は日本での期間が5年までだが、特定技能2号は特定技能1号よりも求められる技術が高度で、日本での在留期間に制限がない。この1月に行われた特定技能2号の資格試験で、同社から27人が受験して18人が合格したという。これは3人に2人が合格したことになる。これで同社の特定技能2号の取得者は75人となった。ゆで太郎システムの外国籍人材は日本での永住権取得を目指している人材が多いミャンマー国籍に限り留学生として採用する同社の外国籍人材の採用と育成の仕方は2つのパターンがある。1つは、ミャンマーに限ったことだが、留学生として日本に来てもらい、日本語学校で勉強して、この1年間で特定技能1号を取得してもらう。これを取得すると、翌年から正社員として採用する。日本語学校への通学には費用が掛かることから、1人あたり100万円を貸与する。このうち80万円が学費や寮費。20万円は当座の生活資金ということで。翌年に社員になってから少しずつ返済してもらう。このアイデアは池田氏の発案であるが、これはミャンマーからの新聞奨学生からヒントを得たとのこと。ミャンマーでは2021年2月にクーデターが起きたことから、彼らが本国に帰ることが出来なくなった。池田氏は彼らに接したところ、とても優秀な人たちであったという。また、ミャンマーの現地で仕事ができなくなったり、お金がなくて特定技能1号の試験を受けることができなかったりというパターンが存在する。そこで、同社がこのようなミャンマーの人たちにお金を貸して、日本に留学生として来てもらい、日本で勉強して、特定技能1号、2号と資格を取得てもらおうという試みである。ミャンマー国籍の人材に限り、留学生として来日してもらい奨学生としての育成している日本人と会話をする機会を持ち日本語力を高める一般的な、外国籍人材の採用はこのようになっている。基本は、現地で特定技能1号を取得しているか、また特定技能1号を取得していて日本に住んでいる人が対象となる。これは技能実習を3年間行って、特定技能1号をこの間に取得している人である。特定技能2号を取得するためには、日本語力が必要になる。例えば、本国で特定技能1号を取って、日本にやって来たとする。それが、たまたま同じ国の人が10人くらいで同じ工場で働いていて、寮に帰っても同じ国の人と過ごして、日本語を使う機会が少ない、ということでは日本語力を高めることはできない。同社にやって来る外国籍の人材は、日本での永住権取得を目指している人材が多いという。そこで、店舗で働いている日常において、彼らは日本人の従業員とコミュニケーションを積極的に取るようにして、また努めてお客と会話をして日本語力を高めている。こうして、特定技能2号を取得する人材が多くなっているという。特定技能2号と日本語検定N2を持つと店長になれるゆで太郎システムでは、外国籍人材の育成と登用する仕組みはこのようになっている。同社では、同じ外国籍の人が住む寮があり、ここでコミュニティが形成される。本社には、ミャンマー、ベトナム、ネパールの抜擢された人材が週に何回かやって来て、同社のマニュアルや日本の法律を自国の言葉に訳す作業を行っている。そして、これらを自国のコミュニティに流している。外国籍人材はそれぞれ母国出身者の寮があり、コミュニティが形成されているさらに、特定技能2号を取得している人材が75人いることから、これらの人材が自国のコミュニティの後輩に勉強の仕方を教えるという環境が出来ている。池田氏をはじめとした同社の幹部社員もこれらのコミュニティの懇親会などに積極的に参加して、それぞれの母国の状況を伺うことによって、外国籍人材の雇用の仕方を考える機会になっているという。また、特定技能2号を取得して、日本語検定N2を持っていると、店長に昇格する資格を得ることができる。これによって、現在4人の外国籍の男性が店長になっていて、3人が夫人を日本に呼び寄せて、子ども誕生した。また、近いうちに外国籍の女性店長が誕生するという。外国籍人材は、資格の要件が満たされると店長に昇格することが出来る外国籍人材の採用と育成が企業成長の鍵を握るゆで太郎システムという会社にとって、いまや外国籍の社員が会社の成長を支える存在になっている。同社の社員はいま370人であり、そのうち外国籍の社員が200人いるということから、彼らがいないと店を開けることができない。新規出店の予算は20店舗となっている。20店舗となると、200人の人材が必要となる。これらを新卒社員、中途採用、外国籍人材が支えていくことになる。2030年の中期計画では、店舗数は300店舗と掲げられていて、あと100店舗という状況。この店舗数は1年に20店舗ずつ5年間で可能となる数字だ。同社の売上は、2024年6月期で101億円であった。5年後は200億円である。店舗数と売上の目標のハードルは高くはないことから、十分に達成可能ではないか。これからの日本は人口が減少するという現実がある。そこで会社の成長とビジョンを掲げる上で、外国籍人材の雇用拡大は重要なポイントを占めることであろう。池田氏は「人材採用は慎重に行なっていく必要がある」と語る。同社が外国籍人材の雇用と育成に力を入れていることに対して、筆者は池田氏に「これから海外展開を目指しているということもあるのでは」と尋ねたところ、「それは、全くない」と語った。池田氏の認識は「国内の立地は隙間だらけですから、国内での展開を充実させていく」ということで、同社では外国籍人材の対策に、ますます力を注いでいく構えだ。