『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。「串カツ田中HD」から「ユニシアHD」へ上場企業の基盤をつくった事業の店名から転じて、新社名に変えた狙いとは(連載2回、第2回)前回は「串カツ田中」誕生からの沿革を述べた。そして創業者である貫啓二氏が、串カツ田中HDの代表から一度降りていたが、再び代表取締役会長に就任して、その前後から手掛けた大改革について述べた。具体的には、「インバウンド対応の店舗を開発」、そして「串カツ田中の定番料理の開発」である。前者は32席で月商2800円を売り上げて、同コンセプトのお店を多店化、後者は大幅な客数アップをもたらし、既存店の売上高を120%に押し上げた。そして旧串カツ田中HDでは、2025年9月に「脱・串カツ田中」を宣言した。これについて、代表取締役会長兼社長の貫氏はこう語る。「これは、『串カツ田中』を捨てる、ということではありません。『当社が進む道』ということです。当社は今後1000店舗体制に向けて、事業領域を拡大して、さらにグローバルに出ていくことを目標にしています。そのためには現状維持ではなく、サービスや質を磨き上げ、プロフェッショナルな人材育成を推進して、『串カツ田中』を変革していかないといけない。『串カツ田中』に次ぐ新しい挑戦、新しい価値を創造して、企業価値の向上を目指していかないと。ピソラの完全子会社化もそのためです」旧串カツ田中HDは、この㈱ピソラ(当時60店舗)を2025年12月に約95億円で完全子会社化した。では、ピソラとはどのような集団なのか。ピソラが持つどのような能力を「脱・串カツ田中」の中に備えようと考えたのか。今回は、ユニシアHDにおける「ピソラ」の存在意義を中心に論述していく。「ロードサイドの革命児」を傘下に入れるまず、筆者が取材をした中から、代表の貫氏と「ピソラ」との出会いについて紹介しよう。㈱ピソラの社長である鬼界友則氏は、京都の老舗ホテルの宴会部門で勤務した後、飲食業界に転じた。勤務している会社で、2004年に「PISOLA」の原点となる店舗をオープン。㈱ミューズに転じて、同社飲食事業部の事業部長として「PISOLA」ブランドを開発し、展開していた。テーマパークの中にあるような外観。二つとして同じものは存在しないまた、貫氏の古くからの友人である廣瀨周栄氏が「PISOLA」ブランドの魅力にいち早く気づき、フランチャイジーとして「PISOLA」に加盟していた。2019年9月、ミューズの飲食事業部を会社分割により独立させ、㈱ピソラをスタートさせるというタイミングで廣瀨氏がピソラに100%出資することになった。それが、コロナになって大変な経験をした。その後、2021年から再び出店するようになった。すると、著しく速い勢いで業績を伸ばし、店舗を増やしていった。このような「ピソラのすごさ」について、貫氏は廣瀬氏から常々伺っていたという。そして、「いろんなところからM&Aの話がきている」と。そこで貫氏は「じゃあ、僕にチャレンジさせてください」とお願いした。ピソラの価値はどんどん上がって、旧串カツ田中HDは約95億円でM&Aを行った、という次第である。「PISOLA」のブランドコンセプトは「リゾート気分で本格イタリアンを」というもの。客単価は2500円から3000円。『PISOLA』はクラフトマン(職人)を育成する仕組みが整っていて、店内仕込み、店内調理にこだわり、クオリティの高い料理、サービスを提供している、貫氏は「PISOLAは、ロードサイドの革命児」と語る。客席はレースのカーテンで仕切られたほとんどが個室で構成されている「PISORA」によって「串カツ田中」の世界観が広がるさて、「串カツ田中」は客単価2700円の居酒屋である。前述の通り「PISOLA」は、いわば「串カツ田中」とは真逆な業態と言っていい。では、「串カツ田中」を育ててきた貫氏にとって、「PISOLA」とはどのような存在なのだろうか。貫氏はこう語る。「その通り。『PISOLA』がやっていることは、『串カツ田中』とまったく異なります。そこで『PISOLA』によって、『串カツ田中』の世界観が広がるのです。よく『PISOLAをどのようにしたいか?』という質問を受けますが、僕は『PISOLA』を支配したいとまったく思わないし、何もしていません。ロードサイドで伸び伸びと成長していただきたい。いま、メガフランチャイジーが加盟店として参入するようになっています」フリードリンクのコーナーはオープンキッチン前に備えられていて、活気のあるオープンキッチンの様子が伝わってくる「ピソラという集団は、これから、われわれがレストラン事業に入っていくことを展望できる素晴らしいスキルを持っていますね。例えば、ホテルのレストランの運営受託とか。海外での可能性も十分にあります」一方、旧串カツ田中HDでも、2024年8月に1号店を開業した「天のめし」に続いて、食事メインの新業態を開発している。それは「厚とん」(2025年5月オープン)と、「ザ・メンチ」(26年2月オープン)である。「厚とん」は2種類の銘柄豚をそろえて、特製のオリジナルブレンドの油で揚げて、厚切りで提供。客単価は2700円。「厚とん」のとんかつは、銘柄豚肉を厚切りで提供して、1000円台のとんかつと一線を画している「ザ・メンチ」は、和牛100%のメンチカツで、スタッフがお客様に順繰りに3個提供。揚げたてのメンチカツをお客様が鉄板の上で切って、断面を焼けるエンタメ性を取り入れている。それをお塩、ポン酢、デミグラスソースとかいろいろな食べ方で楽しむ。ご飯、キャベツ、スープが食べ放題で1800円(税別)。メニューはこの一本のみ。メンチカツはお客に3個順繰りに提供される。厨房で一度揚げたものをお客が自前で焼き上げて好みの味付けをする「世界へ挑む、日本の力。ユニシア」これらを開発した狙いについて、貫氏はこう語る。「僕らは『串カツ田中』という大衆的なアルコール業態をやっていて、「非アルコール系のブランドが欲しいな」と考えていました。ただし、客単価1000円のとんかつ屋さんをやるとなると、原価300円の豚肉を使うことになります。それは、先行する1000円のとんかつチェーンとしのぎを削る、ということ」「ですから、僕らが『ちゃんといいもの』と判断した食事を、適正な価格で提供する。これに来客数が見合うと、ちゃんと黒字になります。そこで僕らは、『一つ上の暮らし」』ということを提案していこうと。ピソラの子会社化も、この考え方に基づいています」このような貫氏の発言から、「価値のあるお店の存在感」で戦っていく姿勢が感じとられる。それは「食事をする、ということの、時間の充実感」というものであろう。筆者は貫氏に、このように訪ねた。「日本のマーケットは、これから人口減少でシュリンクしていきます。それについてどのように考えていますか」と。貫氏はこう答えてくれた。「それは、会社の成長とはまったく関係ありません。どのような外食の大手でもマーケットの10%を占拠しているところはありません。日本のマーケットは巨大なのです。人口が減少したから会社の業績が下がるということはありません。業績が下がるということは、企業努力が不足しているからです」「自動車メーカーもアルコールのメーカーも、日本のマーケットに依存していなくて、グローバル戦略をどんどん進めています。それは、単に売上を拡大するということではなく、事業をスケールしていくためのこと」「当社は2025年11月期の決算で、2億円ちょっとの減損を出しました。当期の売上は210億円で、これにピソラが子会社になったことで、ユニシアHDは300億円となりました。2億円という、大きな金額の減損も耐えられる規模になった今こそ、さらに事業をスケールさせるようなチャレンジングな仕事しなければノウハウは貯まりません。重要なことは、チャレンジを惜しまないこと。そこでちょっと失敗しても、それはスキルとして身に付いていきますから」3月9日に、同社の社名変更に関する記者発表が行われた。そこで、ユニシアHDのタグライン(ブランドの核となる言葉)がこのように紹介された。「世界へ挑む、日本の力。ユニシア」これを解説するワードがこうなっている。日本が培ってきた粘り強さと情熱を軸にユニシアは世界に挑みます。変化を恐れず、挑戦を楽しみ、仲間とともに成長する。それが私たちの力の源。日本の力で、世界を笑顔に。ユニシアはその使命を背負って進みます。――「企業は立ち止まってはいけない」ということは、いつの時代も同じであろう。挑戦をやり続けていかなければいけない。その「挑戦をする」ための、資金力と人材力が必要なのだと。これに気付いて動き出した企業の中では、全ての社員・従業員が向上に向かって動いていることであろう。