『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。この4月から、新卒社員給与35万円、一般社員給与一律5万円ベースアップ「KUURAKU GROUP」の真の狙いとは(この回のみ)今年に入って、小売業界で今年4月に入社する新卒生初任給の大幅な提示額が話題になっている。それはまず、ファーストリテイリング(ユニクロ)の37万円(グローバルリーダー候補/転勤あり)、ノジマでは最高額40万円(通常34万4000円)など。これは、人材不足が懸念される中での策略なのであろうか。ここでは、これに類する飲食業界での事例を紹介しよう。さて、㈱KUURAKU GROUP(本社/東京都千代田区、代表/福原裕一)は、2026年1月13日に、社員の給与アップをリリースした。それは「大卒初任給5万円16.7%アップで35万円」、さらに「全社員一律5万円のベースアップ」という内容である。これで同社社員の平均年収は700万円となる(平均年齢32.8歳)。そして、この4月から、この給与体系が施行されている。これらはどのような考え方に基づいているのだろうか、その原資の背景などについて、同社マネージャーで、人事部門を担当する米原尚彦氏に語っていただいた。KUURAKU GROUPとは代表の福原裕一氏が創業した会社で、1999年年3月に設立。日本(国内16店舗)をはじめ世界7カ国に37店舗を展開しているグローバル企業である。日本ではいち早く多様な国籍の人材を擁して、現在40人の社員のうち12人が外国籍の人材となっている。このほか、アルバイトを250人擁している。ちなみに「2026年4月入社の新卒生」は5人。うち4人が、同社の店舗でアルバイトをしていた人材。ほか1人は、一般募集による人材とのことだ。職場では日本人以外に多様な国籍の人材が働いている生活に不安がないことで、挑戦と成長が可能になるこの給与アップの話題に入る前に、米原氏は「当社は、人材をコストではなく“未来への投資”と捉える経営姿勢を明確に打ち出します」と述べた。それは、初任給のアップや社員のベースアップは、単に人材採用や待遇満足のために行なっているものではない、ということだ。この背景には、大きく2つの要素が存在するという。一番目は、「ウェルビ-イング経営」を軸とした処遇改善ということ。ウェルビーイング経営とは、「従業員身体的、精神的、社会的な健康や幸福(生きがい)を組織全体で高めることで、企業の持続的な成長と生産性向上につなげる経営手法」ということだ。「従業員」が「お客様」に、心を込めた料理とおもてなしを提供することで、「お客様」は喜ばれて、それが「会社・事業所」に売上と利益のアップをもたらす。それによって「会社・事業所」は「従業員」に、安心して働く環境と待遇をもたらすことが出来る。この「従業員」と「お客様」と「会社・事業所」がトライアングルとなって、良い循環を形成する。米原氏はこう語る。「福原代表の考え方は、社員個々にとって『生活する上での不安がない』という状態によって、個人や会社の成長のために、常に挑戦する姿勢を保つことが出来る、ということです」二番目は、人手不足対策ではなく、事業拡大に伴う「投資」ということ。同社では、前述した通り日本国内と海外事業を一体で運営する「ハイブリッド・グローバル戦略」を推進している。2025年度は、海外3店舗(インド2店舗、フィリピン1店舗)、国内も3店舗出店した(すべて銀座)。国内では、インバウンドが1年間に75カ国から16万7000人が来店した。これについて、同社では「国ごとに組織を分断するのではなく、理念や文化、人材育成をグローバルに共有することで、世界に通用する人材の育成と、事業の安定成長を実現してきた」と捉えている。米原氏は「そこで今回の処遇改善は、さらなる成長戦略を担う人材への先行的な成長投資と位置付けられている」と語る。「ウェルビーイング経営」とは、福原代表が、創業当時からその世界観を志して行なってきたことだ。近年になって、福原氏がこの言葉と出会い、自分が描いてきた世界観が、この言葉が意味する概念と合致することに気付き、「ウェルビーイング経営」を唱えるようになった。そこで、一層この世界観を大切にするようになった。多国籍の人材が働く店内には、さまざまな国籍のお客が来店している社員の金融リテラシーを高めるための講座も開講現在マネージャーの米原氏は、20年前KUURAKU GROUPに入社した。その当時の社風を振り返って、このように語る。「多くの人が『将来起業するんだ』と言って、みなギラギラしている感じがありました。しかしだんだんと、『それをかなえるのは、チームだよね。チームづくりが大事なんだよね』という考え方になっていき、『仲間を大切にしよう』『KUURAKU GROUPと共に成長したい』という人が増えていきました」多様な国籍の従業員が増えていくことによって、インバウンドに対応するスキルは向上していった。日本人の従業員も同様だ。このような動向について、福原代表は、常々「多様性が進んでいる職場環境に、みんなが対応して業務を頑張ってくれている。すごいメンバーによって店が運勢されている」と語っているという。初任給の引き上げや社員のベースアップは、これからの会社成長に伴っていくことであり、当然の対価という認識もある。このように、同社の「ハイブリッド・グーバル戦略」は、日本人の従業員の多様性に対するスキルを向上させている。その一方で、海外の店舗が増えることに伴って、そのロイヤリティ収入が増えることになり、同社の財務体質をより健全なものへ導いていった。このような社風と共に、同社の「社員の制度」や「福利厚生」が増えていった。「弊社の初任給は、コロナ前に25万円、コロナの最中に30万円、そしてこの4月から35万円ですが、これは社員の資産形成手当の側面もあります。アップした5万円を、これから20年間毎月貯蓄に充て、20年間で1200万円。これが利回り7%と想定すると2500万円になる。こうして、社員本人たちの人生設計につなげてもらいたい」こうして同社では、社員に向けて「お金のキホンセミナー」を開講していて、社員の金融に対するリテラシーを高めている。同社の姿勢として、「生活に不安がないことで、挑戦と成長が可能になる」という趣旨を前述したが、これによって培われる企業文化は清々しい社風を育んでいることであろう。それは、都心にある同社の店舗を訪ねてみると、真っ先に感じられることである。店内にははつらつとした若いスタッフによって清々しい空気が醸し出されている