『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。FC加盟で学び、独自業態を展開さらに「魚業態」を開発し成長の展望を拓く「ジュネストリー」の秘訣第1回(この連載は計2回)いま、「Z世代の居酒屋」と称される居酒屋が台頭してきている。「Z世代」とは、「スマホやSNSが日常の環境で育った世代」のことで、1990年代の中盤から2010年代序盤に生まれた世代のこと。そこで、「Z世代の居酒屋」とは、ざっくりと「20代に人気の居酒屋」ということだ。この筆者の連載でも、これらの一つ、ドリンク99円の「鶏ヤロー」(鶏ヤロー)や、蛇口からお酒が出て来る「テルマエ」(BIRCH)のことを紹介してきた。これらに共通していることは、ドリンクがひたすら安く、客単価は2000円とちょっと。経営者によると「Z世代が週に2回来店できる」ことを狙っているという。このお客たちは、おいしい食事を求めているのではなく、「コミュニケーション」を目的として、これらのお店を利用している。この「Z世代の居酒屋」のすごさは、お店に行けば分かる。お客の全部(といっていい)が20代であること。学校の放課後のように、19時になると満席になる。そして、大きな声でおしゃべりしている。店内はうるさいほどにぎやかだ。筆者が「Z世代の居酒屋」の現象を知ったのは、2023年の暮れのこと。「とりいちず」(会社名:FS.shake)、「鶏ヤロー」(鶏ヤロー)、「おすすめ屋」(おすすめ屋)、「テルマエ」(BIRCH)、「均タロー」(ジュネストリー)と、5社の動向を取材した。これらを累計づけると、「とりいちず」と「鶏ヤロー」は先輩格、「おすすめ屋」は独立独歩、「テルマエ」と「均タロー」は良きライバル、といった印象を受けている。最近「均タロー」の代表、東明遼(りょう)さんの取材をする機会があり、「Z世代の居酒屋」の経営者に、新しい動きが出ていることを察知した。同社の動向を、今回と次回の2回にわたって論述する。独立開業後、低価格業態の加盟店となって、このコンセプトを学んだ東明遼社長 22歳で独立開業するが、FC加盟の道を模索今回は、ジュネストリーのこれまでの歩みを解説する。同社代表の東明さんは1994年3月生まれの31歳。「均タロー」の1号店は、2022年7月、東京・下北沢にオープンした。以来、東京を中心に16店舗(うちFC4店舗)を展開している。「ジュネストリー」という社名は、フランス語「若さ」「青春」を意味する「ジュネス」と、英語の「ストーリー」を組み合わせた造語で、「若者の物語」という意味が込められているという。東明さんが飲食業に就くようになったのは、高校生の当時のアルバイトから。母が外食企業の焼鳥店でランチタイムのパートタイマーをしていて、お店から「お宅の息子さんにも手伝ってほしい」と誘われたことがきっかけだった。そこで、東明さんの兄がディナータイムのアルバイトを行い、東明さんもそれに続いた。高校を卒業する段になって、東明さんがお店の店長に「社員になりたい」と申し出たところ、社員になった。そして、22歳まで同社に勤務をして、月商800万円の店長も経験した。この間、こつこつと600万円を貯金し、これを開業資金に充てて独立開業した。最初のお店は、JR鶴見駅から徒歩10分の場所。ここに「100円焼鳥」の居酒屋を開業した。その1年後、駅近くで商売をしたくなり、京急平和台駅から徒歩30秒の場所に、「もつ焼き」のお店を構えた。9坪で家賃が30万円だった。「平和島にもつ焼きのお店がない」ということから選んだこの業種であったが、東明さんのお店のすぐ近くに、もつ焼きの低価格チェーンがオープンした。東明さんのお店のもつ焼きは1本150円だったが、こちらのお店は80円。東明氏のお店には際立つ特徴がない。そこで「居酒屋のFCの加盟店になろうか」と考え、いろいろと調べるようになった。このアクションが、今日の「均タロー」が誕生する発端となった。客層も経営者も「Z世代」の世界に共感する一般的な居酒屋FCの加盟金は300万円で、同時の東明氏にとって、これでは加盟に踏み込むことが出来ない。「加盟金50円、ロイヤリティ50円(当時)」というFC本部を見つけた。それが、「均タロー」の原点となる「鶏ヤロー」。そして、同社のホームページに書き込まれている同社代表、和田成司氏のメッセージはとても熱かった。同チェーンの加盟金とロイヤリティを見て「どんなところでマネタイズをしているか不安だった」と言うが、問い合わせをした翌日に、担当の人がいろいろと説明をしてくれて、「なるほど」と。そこで、「鶏ヤロー」に加盟した。「鶏ヤロー」の1号店がオープンしたのは2014年。東武スカイツリーラインの松原団地駅近く。ここには獨協大学があり、「ドリンク全品99円」を筆頭にした低価格路線は、学生たちによく受けた。客単価2000円で定着していった。筆者はコロナ前の2018年1月、この獨協大学近くの「鶏ヤロー」を体験した。店内は飾りっけが無く「お酒を飲む部室」のような雰囲気。お通しが「えびせん」で、380円を支払うといくらだけ食べても良い。「鶏ヤロー」はコロナになって、3年間ほどで60店舗以上増店して、加盟店も増えた。これらの経営者は20代が多い。客層が「Z世代」であれば、経営者も「Z世代」なのである。それぞれ、共感できるものがあるのだろう。「均タロー」大宮店の店内。お客は見事に20代ばかりで構成「鶏ヤロー」5店舗体制から独自業態を発案ジュネストリーが「鶏ヤロー」に加盟して、同社の「鶏ヤロー」1号店をオープンしたのは蒲田店。2019年で東明さんは25歳であった。そして、コロナになるまで3店舗に増やした。同社では、創業の鶴見のお店を後輩に譲り、平和島のお店は閉店した。コロナの中で、同社がオープンした「鶏ヤロー」は、練馬店と下北沢店。これで「鶏ヤロー」は5店舗になり、社内では「そろそろ直営やりましょうよ」という気運になっていった。こうして生まれた、同社オリジナル業態の構想は、このような内容である。まず「鳥貴族」のイメージがあって、それよりちょっと低い料金均一であれば、新参の業態でも十分に戦うことができるのではないか、と。そして、「鶏ヤロー」ではお通し代をいただくが、このお店ではいただかない。そして、グルメサイトの人と相談している中で、「食べ飲み放題があると、予約を取りやすい」という。そこで、「食べ飲み放題」2980円(税込)を入れた。店名は、「均タロー」とした。この業態の構想を「鶏ヤロー」代表の和田氏に説明して理解をしていただいて、そこから「均タロー」の物件を探した。そして、ジュネストリーが既に「鶏ヤロー」営業している下北沢に物件が上がった。そこで、「鶏ヤロー」と「均タロー」がカニバルことがなければ、業態として成立すると考え、この同じ下北沢で、「鶏ヤロー」に「均タロー」が対抗する形で出店した。2022年7月のことである。この「均タロー」は24坪60席で月商600万円くらい。翌23年3月大宮に70~80席の「均タロー」をオープンした。同店は1000万円あたりを売るようになった。フードメニューの人気ナンバーワンは「からあげ串」。スパイシーな味わいが記憶に残る「均タロー」が走り出した当時の客単価は、「鶏ヤロー」と同じ2000円であった。それが、「均タロー」はお通しがないということで「0次会」(「軽く一杯」の動機)や、夜遅くや深夜のお客様にとってご利用しやすい。そして、2980円の「食べ飲み放題」が認知されることによって、客単価は上がる傾向を見せていき、いま2400円あたりになっている。「均タロー」は2026年1月末で16店舗(うちFC4店舗)と前述した。1号店は22年7月だから、3年半でこの店舗展開は結構なハイピッチである。この背景には、同チェーンならでは強さがあり、そして新しい路線をつくる原動力になった。(次回は、3月19日公開)「食べ飲み放題」2980円を設けることで、客単価が上がり、予約が入るようになった