『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。コロナ禍にあって「おにぎり販売」に着眼、独自に「繁盛法則」を見出す(この回のみ)今回は「おにぎり」で業績回復を果たしたお話。この取材で、この商品づくりのコンセプト、立地戦略などについて、とてもロジカルに知ることが出来た。そして「コメ」だからこそ展望することが出来るグルーバルな市場の広がりも見えてきた。 事例として紹介するのは、名古屋に本拠を置く株式会社マリノ(代表/水野由太佳)が2022年6月に1号店をオープンした「ごちそう 焼むすび おにまる」(おにまる)である。以来、国内15店舗、海外8店舗(2025年8月末)を展開している。*参考:・マリノ https://www.marino-net.co.jp/company・ごちそう 焼むすび おにまる https://www.onimaru-net.com/ 「何か、新しいことを始めよう」と、気付いた商売マリノの前身は、現代表の父・水野弘規氏が、名古屋郊外の新興住宅地長久手(現・長久手市)に喫茶店を開業したことに始まる。これが1982年のこと。喫茶店は3店舗に広がり、1993年に4店舗目としてオープンした「ピッツェリア・マリノ」(マリノ)によって事業は大きく飛躍した。このカジュアルイタリアンは、たちまちにして行列が絶えない繁盛店になった。同社では、この「マリノ」を根幹として、フードコート業態の「パルメナーラ」や、カジュアルイタリアンの業態を展開していった。2019年度には、年商70億7000万円を売り上げた。このようにマリノは「カジュアルイタリアン」が得意とする飲食業として、企業体をつくり上げていった。この後、コロナ禍がやって来る。マリノの店舗では営業できないところも現れ、2021年度には58億5000万円となった(17%減)。さらに、同社の主要食材である小麦、チーズといった輸入食材が高騰していき、原価率が急激に高くなっていった。そこで、同社では「何か、新しいことをやろう」と。新しい事業の立ち上げを模索するようになった。そして、代表の水野氏は、新しい繁盛のアイデアに気付くようになった。水野氏は、こう語る。「まず、当社の加盟店に沖縄の会社様が存在して、沖縄を訪ねる機会がちょこちょことありました。そこで、空港にはポーク玉子おにぎりのお店があって、いつも行列ができていました。そこで、改めて『なぜだろう』と」おにぎりの業態開発の指揮をとった代表の水野由太佳氏。「新しいことに取り組むのはわが社の社風」*参考:・ポーたま株式会社 https://porktamago.com/company-information/・ポーたま 東京ミッドタウン八重洲店 https://porktamago.com/shop/009-tmy/「そして、北海道でパン屋さんを展開している友人が、『コロナの最中におにぎり屋さんを手掛けた』と。友人は『おにぎり屋さんは、いいよ』と言う。当社の場合、パスタ、ピッツァという形で炭水化物の商品を手掛けています。そこで『おにぎり屋さんもいいね』と、思うようになりました」*参考:てづくり おむすびの店 どんぐり 大通り店https://www.donguri-bake.co.jp/shop/onigiri-odori/全国的にトレンドになっている「ごちそうおにぎり」業態の原点といえるのは「ポーク玉子」イオンモールのお客が買うような「おにぎり」マリノでは、イオンモール長久手(愛知県長久手市)の4階で『マリノ』を営業していて、ここで焼成したピッツアを1階で販売していた。これが人気を博していて、かねがね「この場所、いいな」と、考えていたという。そこで、「ここで、おにぎり屋をやってみよう」と、このプロジェクトが動き出した。そして、同社では10カ月間かけて、マーケティングに取り組んだ。全国のおにぎり屋さんを見て回り、おにぎりの商品、そのつくり方、パッケージ等々、「売れる、おにぎり業態」をつくるために、あらゆる部分を研究した。そこで誕生したコンセプトは、「イオンモールのお客様に合う、おにぎり」ということ。その意図は、決して高級志向ではない、「日常的に使う」ということ。いわゆる「町のパン屋さんのような、おにぎり屋さん」(水野氏)である。こうして、2022年6月、イオンモール長久手の1階に、「おにまる」1号店がオープンした。「おにまる」の売り場を見ると、おにぎりの価格は全体的にコンビニの1.2倍というイメージである。鮭、昆布、といったベーシックなおにぎりは160円からで、特徴がはっきりしたごちそう感のある300円台後半から400円台のメニューを打ち出していく。いま商品の販売比率は、後者の方が高いという。お客の組単価は1000円弱(100円台の商品よりも、300円400円台といった比較的高額の商品が売れている、という)。イオンモール長久手の「おにまる」では、イートインスペースも設けている筆者は、「おにまる」の商品構成は、ハンバーガーに似ていると考えている。ベーシックなおにぎりは160円。ハンバーガーで言えば、パティ1枚の商品である。これが、パティが2枚になり、トマトやチーズが加わって、400円、500円の「ごちそうハンバーガー」となっていく。そこで、ハンバーガーのファンは、自分の欲求レベルや懐具合によって、購入するハンバーガーを使い分ける。このようにハンバーガーのファンが、リピーターとなっていく、といった行動パターンが「おにまる」にも存在しているようだ。マリノはコロナ禍によって、年商が2019年度に70憶7000万円だった「おにまる」は、21年度に58億5000万円となったが、「おにまる」の事業化によって24年度には過去最高の81億2000万円となった(38%増)。POPは目に付くポイントの至る場所に効果的に配置している勤め人の「一日の生活行動」に入ると「強い」「おにまる」で一番売っているお店は、京都・四条河原町店。ここは路面と2階で計17坪、ここで月間6万個を販売することもあるという。1号店の長久手の店は25坪で月間3万個ほど。各店舗の大体は、このような傾向にあるという。水野氏によると、「おにまる」を店舗展開して分かったことは、勤め人の店前通行量が多いお店は、総じて売上が安定しているということだ。名古屋・栄の地下、名駅の地下、大阪・本町の商店街、東京・西新宿とか。西新宿の店は朝7時30分にオープンして、この朝の時間帯だけで1日の販売個数の4~5割程度を販売し、夕方まで売れ続けるという。「お勤めの方の生活行動には、一定したパターンが存在しています。それは、朝お勤め先に行く前に、その近所にあるコンビニに必ず立ち寄る。『おにまる』を利用されているお客様も、このような利用の仕方をしています。このような生活行動の中に入ることが出来ると、強い店になります」「京都の繁盛店の場合、地元のお客様から認知されていることに加えて、インバウンドのお客様が全体の半分を占めていて、これが大きな売上をつくっています。京都のインバウンドは『日本文化』に興味を抱いて滞在していることから、このような傾向を示しているようです。インバウンドが多いというほかの都市では、このような傾向はみられません」「海外店舗が増えている背景には、台湾、香港、深圳、韓国といったアジア圏のパートナー様が、『おにまる』を食べに来て、ここで改めて評価してくだり、『おにまる』を展開しようと決断されています」さらに、欧米では、グルテンフリーのトレンドにあることから、欧米の事業家からも「おにぎり」が注目されているという。つまり「おにぎり」は、いまや世界的にブームなっていると言っても過言ではない。突然ながら、グローバルの市場が開けてきた。西新宿の高層ビル街を後背にした西新宿店。朝の時間帯に一日の半分近くを売る