『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。日本の「出汁の文化」でメニュー構成ターゲットを明確に「30代女性」として成長する「おでんバーうまみ」の強さとは(この回のみ)いま、都心で「おでん屋」のものすごい繁盛店が店舗展開をしている。店名は「O’denbarうまみ」(以下、おでんバーうまみ)。2021年2月に創業店舗を横浜・関内にオープンして、以来、表参道、代官山、赤坂、麻布十番、新橋、仙台(FC)、三軒茶屋と8店舗を展開している。この出店している地名が、店の存在感を強く示している。お店の特徴は、10坪以下ないし15坪程度までと狭小物件で、路面店もあるが、地下1階や空中店舗も存在する。そして、ランチタイムから営業している。てディナー帯はほとんど予約で満席。webで同店を紹介する記事では、「坪月商70万~100万円」と繁盛店揃いとのことだ。この「おでんバーうまみ」が、いかにしてこのような繁盛を呈しているのか、これからどのようなことを展望しているのか、筆者の取材からここでまとめておきたい。28歳で独立を決意して「飲食の道」を定める「おでんバーうまみ」を経営するのは、株式会社WAS(本社/東京都港区、代表/宇野優司)。前述の通り、コロナ真っ盛りのときに会社を立ち上げている。同社代表の宇野優司氏(34歳)は、高校生当時から「将来は経営者になりたい」と夢を描いていた。大学卒業後株式会社グロブリッジに入社。同社は、飲食業の直営店を展開しながら、飲食店の集客支援などを行っていた。宇野氏としては、同社の事業内容が、自身にとって将来のキャリア形成に役立つと考えていたという。そして、新事業であるオーストラリアの飲食店展開を担当しマネージャーも勤めた。その後、宇野氏は「グローバル」「IT」の知見を深めようと、アメリカ本社のデル・テクノロジーズ株式会社に入社、大手法人営業を担当し、同社には1年間勤務した。このとき宇野氏は28歳になっていた。「起業するタイミングを感じていた」という。そこで宇野氏は、これまでの人生を振り返って、「自分は、何が出来るのか?」と自問自答した。そこで導かれたのは「飲食の道」であった。学生時代、宇野氏は「栄養学」を勉強していた。アルバイトをした飲食店で、「調理師」の免許を取得した。そして、外食企業で学んだことも踏まえて、これらの経験を「起業」につなげていきたいと考えた。宇野氏は、このように語る。「私が考える「起業」とは、『世界で事業を行う会社』ということでした。では、世界に通用する、自分にとっての『食の素養』とは何だろうか、と。そこで、『日本人であること』『日本の食文化』ということを突き詰めていったところ、『出汁の文化』に行きつきました。「グローバルで認知されている日本の外食は『ラーメン』『すし』ですね。では、日本で十分に通用していながら、グローバルにないものとは何だろうか、と。そこで『おでん』が浮かんだのです。そこで、日本における「王道のおでん」をグローバルに広げていこうと考えました。会社名の『WAS』も、『わびさび』が由来です」宇野優司氏は、起業の事業を「世界で事業を行う会社」と定めて、日本の「出汁の文化」に着眼したコンセプトをロジカルに組み立てて繁盛店を展開宇野氏が考えた、グローバルに広げる「おでん屋」とは、このようなコンセプトである。まず、ターゲットは「30代女性」。店舗は7坪から十数坪と小型で、必ずバーカウンターがあり、地下1階や空中階でも賑わっている。客単価は4000円から5000円。そして15年間で「グローバル1000店舗」という壮大な計画を描いている。宇野氏は、このようなコンセプトを確認してから、10坪以下の物件を探すようになった。理由は、ワンオペで店舗を回すことができること。居抜き物件が基本で、追加投資はほぼやらずに、施工期間も短くて済む。ただ、これまで必須事項として行なったことは、カウンターのない物件にはカウンターを設けるということ。それは、「30代女性」をターゲットにしているから。昔ながらの、中高年男性が集まるような「居酒屋」ではなく、バーの感覚で女性お一人様でも気軽に利用できる「おでんバー」だから。前述の通り、飲食店にとって華やかな街に出店している理由もターゲット「30代女性」であるからこそ。宇野氏はこう語る。「これらのお客様を呼び込むためには、このような地名が必要になります。また、日常利用をしていただきたいので、客単価を4000円から5000円にしました。今日の情報リーダーは『30代女性』であると考えています。雑誌やSNSのトレンドは彼女たちが中心です」「われわれの『おでん屋』は、15年間で1000店舗を目標にしていて、世界に発信していくおでん屋なのです。このような壮大なビジョンを掲げているので、まず「『旗艦店』となる店舗は、「有名な街」にあることが重要です。こうして認知が広がっていくのです」筆者は宇野氏に、「出店場所を探す上で、普段心掛けていることはどのようなことか」と尋ねた。宇野氏は、「それは3つあります」と。「1つ目は、オフィス街としての需要がしっかりとあること。つまり『働いている人』が、その街に存在しているということ。2つ目は、『わざわざ飲みに行く』という、いわゆる繁華街的な要素を持っていること。3つ目は、背景に住宅地があって、居住者がそれなりに存在していること。これによって、デリバリー需要も満たすことが出来ます」メニューのメインは「おでん」。こちらは「本場関西おでん5種類盛り合わせ」1000円(税込、以下同)宇野氏は、これまで展開してきた8店舗は、「概ねこれらをクリアしている」という。このような街で働く女性が、「行ってみたいおでん屋さんが出来た」とか。その街に憧れて、例えば、「代官山にあるおでん屋さんに行く」とか。このような「30代女性」のシーンを容易に思い描くことが出来る。インターネット集客によって空中階を満席にするそして、出店場所が、地下1階とか、空中階に出店していて、そこで集客を可能にしている背景について尋ねた。「それはまず、インターネット集客ですね。われわれが常に意識していることは、『紹介』『SNS』『食べログ』『web媒体』『グーグルマップ』とか、これらの動線を消さない。あらゆる販路から、お客様が『行ってみたい』と思ったら、必ず弊社の店舗にたどり着くという設計をしています。それぞれの媒体には、マッチング度合いの高い言葉があります。例えばSNSですと、『一人呑み』という言葉にハッシュタグをつけるとか」「また、これらの立地で、ランチ営業を行なうことも重要です。われわれの仕込みとは、基本的に放っておくことが出来るのです。例えば、角煮が『煮込まれる』、牛筋が『煮込まれる』ということですね。おでんの出汁は、前日から昆布を漬けておいて、朝出勤したタイミングで火にかければいい。ですから『ランチ集客』ということを一生懸命にやらなくてもいいのです」「そこで、ビルの路面にランチメニューの看板を出しておいて、それを見たランチ難民の人が、「お手ごろ価格」ということで、ふらっと店に入ってご利用してくださる。ここでおいしくいただいた体験によって、ディナーにつながる。このようなパターンが結構ありますね」旬の食材を使用したメニューをラインアップ。こちらは「富山県産ホタルイカとニンニクの芽の紹興酒づけ」900円一般的に、居酒屋がランチ営業を行うことには議論が分かれるところだ。生産性や、労働環境を重視するとランチ営業は行わないでディナーに集中する。しかし、「おでんバーうまみ」では、「おでん」という商品特性をフルに活かして、「オフィスワーカーがいる不便な場所で」「ランチ難民を狙って、お手頃価格のランチメニューを掲げ」、それを見て「ふらっと入ったお客が、美味しい体験したことを記憶して」、それが「ディナー営業につながる」という好循環を生み出した。宇野氏が、創業店舗をつくるときに考えたコンセプトの、ターゲット「30代女性」ということが、繁盛の方程式をロジカルにつなげている、ということが出来る。これからはFC主力で店舗展開をしていく構想を持っていて、「グローバル1000店舗」という絵柄も、この方程式が可能にするものと、筆者は考えている。居抜き店舗を活用して追加投資を抑えて出店するが、カウンター席は必須の造作としている