『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について綴る。坪月商147万円!圧倒的な生産性を築く居酒屋の秘訣KIWAMI(本社/川崎市中原区)コロナ禍にあっても店を強くした「2分間メニュー説明」の仕組み第2回(この連載は全10回)前回では、創業した10坪の店が開業13カ月で月商430万円を売り上げたことと、その背景について。さらに、共同経営で2つ目の店舗を出店して、共同経営者の二人が得意としている「鮮魚の刺身」と「もつの刺身」を合体した「極み盛り」を開発し、それが看板メニューになった話を述べた。今回は、その「極み盛り」を不動の看板メニューに育て上げて、さらに繁盛する仕組みをつくっていった秘訣について述べたい。 KIWAMIは「料理と接客で勝つ飲食店」KIWAMIが高い生産性を築き上げることができた要因について、じゅんじゅんと述べていくが、そのポイントの一つとして、同社代表の阿波さんは「わが社は料理と接客で勝つ!」という方針を打ち出している。 これは、阿波さんが飲食店の繁盛に起因する項目として「料理」「接客」「立地」「価格」「広告」「清掃」の6つを取り上げ、「KIWAMIは、もっぱら料理と接客」に注力する」ということを宣言している。この具体例として、KIWAMIでは「接客」での重要な行動として「2分間のメニュー説明」を行っている。これは、お客が来店すると、従業員がお客にメニュー説明を「2分間行う」ということだ。このポイントを4つ挙げている。1つ目。「お客に、KIWAMIの店の楽しみ方を教える」ということ。ここで参考にしているのは「ディズニーランド」の手法である。ディズニーランドに初めていくとして、何も準備しないでいくと、その楽しみ方が分からない。それが、2回目。ディズニーランドに詳しい人と行くと、ディズニーランドの体験がとても楽しくなる。その一番は「ファストパス」の存在。楽しみ方を知ると「楽しくなる」。メニュー説明を行う目的は、初めて来たお客に、絶対に「これだけは食べてもらう」ということが狙いとなっている。2つ目。「人は脳で食べている」ということ。そこで、メニュー説明によって、お客の脳に「メニューの魅力をインプット」する。それによって、メニューの付加価値を高める。メニューにある「マグロの刺身」を注文したお客に、それを届けるときに「お待たせしました! こちら1週間熟成した、大間の生の本マグロです。分厚く切ってありますので、よく味わって召し上がってください」と。このような提供方法をされると、お客様が楽しくなるのは自明である。 3つ目。「人はすぐに忘れる」ということ。そこで、メニュー説明によって、お客の「記憶に残る」ようにする。4つ目。「お客からクレームが出ない」状態になる、ということ。友人が働いている飲食店に行くとして、そこで自分が店に「クレーム」を言う場面はあり得ない。それは店との間に信頼関係が出来上がっているから。KIWAMIでは、お客と従業員との間に「信頼関係」をつくるために、「2分間のメニュー説明」を行っている。淀みない「2分間のメニュー説明」KIWAMIの「2分間のメニュー説明」の内容を、ここで文字に起こして紹介しよう。お客が入店して席に着くと、従業員がお客に「2分間のメニュー説明」を行う――本日はみなさんご来店いただきありがとうございます。みなさんは、本日4名様でご来店ということで、みなさんの中に当店を始めてご利用の方はいらっしゃいますか。当店は「鮮度の極み 魚もつ」と言います。当店の看板メニューは「極み盛り」と言いまして、川崎の北部市場から仕入れた新鮮なお魚のお刺身6点と、朝締めした豚のもつの刺し身6点の、計12点の盛り合わせとなっております。豚のもつは、朝締めしたものを低温調理で2時間かけておりますので、安心してご賞味することができます。こちらを、当店自家製のニラ醤油につけて食べてお楽しみください。こちら、お写真の通りかなりボリューミーなので、2名様サイズのものとか、1名様分もご用意できます。看板メニューの「極み盛り」で使っている朝締めのもつを、こちらの串焼きにも使っています。串焼きは全部で8種類ありまして、一番人気は、こちらのレバーでして、その日のお任せで、3本盛、5本盛もご用意しております。こちらが「信玄鶏」という山梨のブランドの鶏肉を使ったつくねです。お店で手切り、手ごねで、丁寧につくねを仕上げています。一番人気は、こちらの「月見つくね」ですが、季節限定の「春れんこんのつくね」もとてもおいしいので是非是非、お好きなつくねを試してみてください。またまだ寒い日が続きますので、こちらの「もつ鍋」もおすすめです。当店の「もつ鍋」の特徴は、とても新鮮なもつを使っていまして。もつ鍋の本場の福岡でもつ鍋を食べますと、味噌煮にして食べるのが一般的ですが、当店では「塩味」をおすすめしております。「もつ」がたっぷりと300g入っていますので、おなかいっぱいになる一品かと思います。こちらが「選べる珍味の盛り合わせ」となります。いろんな種類の珍味がありまして、1種類ずつ頼んでいただくこともできるのですが、こんな感じで3種、5種と盛り合わせにしていただくと、お得にお召し上がりいただくことができます。「2分間のメニュー説明」を行う前のメニューの状態続いて、左のページにいきまして、こちらが「旬野菜」と「逸品」のお料理となります。ただいま3月になりまして、「春野菜」が入ってまいりました。そして、新物「ホタルイカ」を使った天ぷらですね。今日は「焼きレタスのからすみシーザー」がございます。そして、こちら「新玉葱」は豚バラで巻いて串焼きにしています。こちらは卵黄につけてお召し上がりいただきます。私のおすすめのお料理でございます。それから、「おすもうさんの野菜スティック」。生で食べられるのは生で、茹でて食べた方がおいしいものは茹でて、お野菜の一番美味しい食べ方にこだわって食べていただきます。こちらを自家製のニンニク味噌で、お召し上がりいただきます。こちらが、今日の「鮮魚」のコーナーですね。今日は「生本マグロ」が入ってきました。「赤身・中トロ・なかおち」の3点盛が、大特価の1299円でお召し上がりいただけます。こちらは数量限定ですので、お早めにご注文ください。あと、こちらは新物の「ホタルイカ」で、「なめろう」と「酢みそ」の2種類があります。「酢みそ」が定番ですが、当店のおすすめは「なめろう」です。そして、生本マグロを使った「とろたくつまみ」がございます。これには自家製の「いぶりがっこ」を使っています。こちらも香りをお楽しみいただけるかな、と思います。あと、この冬最後の「あん肝ポンズ」がございます。「広島県産のカキフライ」は1個からご注文いただけまして、自家製の生のりタルタルでお召し上がりいただけます。こちらも大変おすすめです。それから、「広島県産の生牡蠣盛り」。フルサイズは10個、ハーフサイズは5個でご用意しております。〆には、こちらのこだわりの手巻きで、「よくばり手巻き」「こぼれいくら手巻き」「本マグロとろたく手巻き」「筋子手巻き」がございます。最後の〆ですね。こちら甘いもので〆ていただくのも良いですが、こちらを見ていただきますと、当店の2枚看板でやらせていただいている「陳建一直伝‼ 陳麻婆豆腐」がございます。これは、当店の代表が「赤坂四川飯店」の陳建一さんのところで中華料理の修業をさせていただきました。当店は居酒屋ですが、陳麻婆豆腐を本気でやらさせていただいております。2種類の豆板醤と、最高級の青山椒を使っています。このようなこだわりの食材を使った陳麻婆豆腐は大変おすすめでございます。当店の看板メニューですので、初めての方には是非是非食べていただきたい逸品でございます。――「2分間のメニュー説明」を終えた後の状態、朱色の筆文字によって印象深くなる