『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について綴る。坪月商147万円! 圧倒的な生産性を築く居酒屋の秘訣KIWAMI(本社/川崎市中原区)新しいKIWAMIの概念「KIWAMI言語」が誕生第7回(この連載は全10回)前回の第6回では、KIWAMIが会社を挙げて年1回行っている全社集会の「キックオフ」の内容を紹介した。ここの第1部となる従業員の集会では、自己紹介からはじまり、「マインド」という「KIWAMIの常識」を従業員の全員でつくっていく。全社集会の最初の段階で、従業員の総意を整えるという進行になっている。今回は、同社の「キックオフ」が、さらに進化している様子を紹介したい。 KIWAMIが求めていることが、コンテンツとなるKIWAMIでは、第6回で論述した「労務マトリクス」の中に、「新しいツール」として、「KIWAMI言語」を設けた。これは何かというと、「KIWAMIのノウハウ」である。2025年の「キックオフ」(4月7日開催)で紹介された「KIWAMI言語」のすべて63本をここで紹介しよう。1. 3つの好き2. 勝利の方程式3. メニュー説明の意味4. 売上の角度5. 幸せとは6. 他責にするな、自らが変われ7. 4つの採用/リファラル、カンテラ、セレクション、アルムナイ8. 1%の努力9. 10円の価値10. 時間、住居、付き合う人11. ターゲットとは12. 自立、成長、貢献13. なぜ企業理念があるのか14. マネジメントスキルと作業スキル15. なぜ坪売(坪月商)なのか?16. 飲食人の価値17. 類は友を呼ぶは本当18. マニュアルをなめるなよ!19. 採用費っていくらなの?20. 給与とは21. 出勤率の重要性22. 人はなぜ働くのか23. 離職率24. 売上=客数×客単価×時間25. 1秒の価値26. メモせよっ!27. シフト作成は愛28. なぜ料理と接客なのか29. 物件の条件30. 人は脳で食べている31. センターピン理論32. 点と面の接客33. 予約はなぜ取らないのか?34. クソな常連はいらない35. 客数=新規+常連36. 満席率の重要性37. 看板メニューは4つあれ38. 利益=売上―経費39. 脳と体は同時に動かない40. 給与とはストレス対価41. 坪売(坪月商)100万円ノウハウ42. 給与は仕事の総和の山分け合戦43. 役職ではなく役割で仕事をしよう44. 労働生産性45. 1人欠員した時の損失46. クオリティ、客数、客単価の繰り返し47. 仕事は量、スピード、質の順で決めよ48. 五感でたのしませよ49. 1センチにこだわれ50. 料理は科学51. 飲食業はすべての学問が必要。だから面白い52. マインドの重要性53. 飲食店の利益構造54. 新メニューのつくり方55. 塩と砂糖のブル56. 人が悪いんじゃない仕組みが悪いんだ57. 2回目と3回目の来店率と理由58. 10年後に残っている店舗数59. 好かれる人より嫌われない人60. 我以外皆師61. 理念採用、理念浸透62. 求人はスピードが命63. 世の中はほぼグレーゾーンこれらの中には、一般的に普段使わない言葉もある。何となく「本のタイトルみたい」な印象を受ける。これを作成したKIWAMI代表の阿波さんは、「1項目を説明するためには10分から15分が必要となるが、阿波さんはこの63項目の全部を説明することができる」と語る。 「KIWAMI言語」は世の中に共通する概念阿波さんによると、この「KIWAMI言語」をつくったきっかけは、このようなことだ。――私は、業者様とお話しているときのある日、気づいたことがありました。「あれ、オレって最近同じことばかりしゃべっていないか?」と。家族と話しているときも、業者様に話している内容と同じ。それは「幸せとは」とか、「1%の努力」とか、「自立、成長、貢献」とか。「KIWAMI言語」とは、わが社のことを言っているのではありません。世の中に存在している概念です。例えば、「KIWAMI言語」の1項目「3つの好き」とは何でしょうか。これは「会社が好き」「仲間が好き」「店舗が好き」の3つです。この「会社が好き」「仲間が好き」「店舗が好き」の「3つの好き」を持っている人が、飲食店のスタッフになると、その飲食店は売上がどんどん上がっていくのです。この「3つの好き」を達成するために、私はいろんなことに取り組んでいるのです。それこそ、「社員旅行」も「3つの好き」。「お給料」「インセンティブ」も「3つの好き」。「マインド」も「3つの好き」です。私の場合、物事を考えて意思決定するまでは、すべてこの「KIWAMI言語」に基づいています。飲食店で働いていて、独立を目指している人がいたら、この「KIWAMI言語」を覚えて、腹に落として活用すると、独立は絶対に成功します。――「肩書」ではなく「役職」で仕事をする会社KIWAMIの組織には「店長」という役職は存在しない。同社では「横軸隊長制度」という組織にしている。お店の中に「キッチン隊長」「ホール隊長」「マインド隊長」という3つの存在があって、これらのスキルが身につくと、「マネージャー」となる。■「キッチン隊長」の業務はこうなっている。・在庫管理・在庫調整(冷蔵冷凍庫)・キッチン発注・仕入れ・定位置管理・新メニュー開発・宴会メニュー開発■「ホール隊長」の業務はこうなっている。・ホール教育・時間管理・予約管理・メニュー作成・ホール発注・ダイニー編集■「マインド隊長」の業務はこうなっている。・小口管理・PC入力・原価・人件費・店舗PL・人材育・各採用・シフト作成ここに3つの「隊長」の業務を並べたが、これらの3つの能力が、「店長の業務」となる。つまり「店長」とは、役職ではなく「業務」なのである。そこで、店長が行う業務を3つに分類して「キッチン隊長」「ホール隊長」「マインド隊長」を設けている。業務の習熟のステップアップは、「キッチン隊長」の業務ができるようになったら「ホール隊長」になり、「ホール隊長」の業務ができるようになったら「マインド隊長」になる。この3つのすべてができるようになったら「マネージャー」になる、という具合である。ではなぜ、「店長」をなくして「マネージャー」を設けたのか。阿波さんによると、それはトヨタ自動車の会長、豊田章男さんが述べている「われわれは『肩書き』で仕事をしているのではなく、『役割』で仕事をしている」という考え方に倣った、という。豊田さんの発言に、このようなものがある。「とにかく『肩書き』というと、『肩書き』で上の人の意見が通ったりする。だけどトヨタが大事にしているものは、もっと現場にあり、モノに近い、お客様に近いところで、『事件』が起こっているわけです。それを上の立場の人たちが、『肩書き』ではなくて、『役割』をもって対処する」阿波さんによると、「店長」という「肩書き」を与えると、その「肩書き」の中で業務をこなす能力が備わっていくということがあるという。しかしKIWAMIの「横軸隊長制度」は、その業務の内容を整理して3つに分類して、その一つ一つの3人が一つになって「店長」の役割ができるということ、ということだ。「横軸隊長制度」によって、業務が属人化せずに個人のスキルが格段に向上している