『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。「アメ横」に登場した400席のしゃぶしゃぶ「海鮮市場 八芳」に詰め込まれたアイデアの数々(この回のみ)上野から御徒町駅までつながるアメ横は、海産物を扱う小売店が立ち並び、お客を呼び込む威勢の良い声でにぎわっている。さらに最近では海鮮丼からエスニック料理の露店が軒を並べていて、巨大な飲食店街を形成している。ここで食事を楽しんでいるお客は、アジア系のインバウンドが多いように感じられる。6月15日、このアメ横のほぼ中央部にある「アメ横センタービル」の2階に「海鮮市場 八芳」というレストランがオープンした。店舗規模は240坪で400席を配している。おそらく上野界隈では最も大きなレストランではないだろうか。同店の特徴は、その巨大さに加えて、鮮度の高い海鮮を中心とした食材がアイスベッドにずらりと並べらていること。店名の冠として「日本初の市場型セルフスタイルしゃぶしゃぶ&浜焼きレストラン」と付けている。この冠の通り、同店は市場で買い物をする感覚で、お客がセルフサービスで好みの食材を求めて、自分のテーブルで好みのスープを注文し、自分で選んだ食材をしゃぶしゃぶにして楽しむという趣向である。上野駅と御徒町駅の間のほぼ中間に位置する「アメ横センタービル」時流に乗ったレストランをつくり繁盛を呈する同店を運営するのは株式会社FANG DREAM COMPANY(本社/東京都中央区、代表取締役/内田幸男)。同社は2013年12月に設立、翌2014年1月に高級中華料理店の「銀座芳園」をオープンしたことを皮切りに、2016年創作中華料理「銀座夜市」をオープン、2022年より中国の潮汕(ちょうさん)料理の専門店「孫二娘 潮汕牛肉火鍋(そんじちょう ちょうさんぎゅうにくひなべ)の運営を開始した。さらに、2024年2月には、東京・銀座八丁目に高級ブッフェレストランの「海鮮ブッフェダイニング 銀座八芳」をオープンするなど、中国料理専門店のほか、しゃぶしゃぶ、焼肉などをブッフェ形式で提供しているレストラングループである。ちなみに、上記の「海鮮ブッフェダイニング 銀座八芳」も400席と巨大な客席規模を有している。さて、筆者は同社が展開するレストランを、2022年に立ち上げた「孫二娘 潮汕牛肉火鍋」から継続して取材をしてきた。そこでそれぞれのレストランに、同社の慧眼ぶりを感じていたものである。まず、「孫二娘 潮汕牛肉火鍋」は、日本ではなじみの薄い潮汕料理という料理ジャンルを紹介。日本人が好む味付けに迎合しない「ガチ中華」でまとめている。当時はコロナ禍を引きずっていて、中国旅行ファンにとって、本土に渡って本場の中国料理を楽しむ機会がないという状態。そこで、同店はこのような日本人の中国旅行ファンや、日本在住の中国人が、日本に居ながらにして「ガチ中華」を楽しむ場として大層繁盛を呈した。そして、「海鮮ブッフェダイニング 銀座八芳」は巨大な収容力を持つことから、食材の品揃えが「150種類」と圧倒的な品揃えを提供している。オープンした当時はコロナ禍もすっかりいえて、たくさんの食材の前に、たくさんの人々が集まり、大いに食事を楽しんだものである。すべて食べ放題で1万3000円(税込、以下同)、1万8000円、1万9000円(食材の内容で価格が異なっている)提供している。「買い物」「調理」「食事」を一体化する今回の「海鮮市場 八芳」の冠の「日本初の市場型セルフスタイルしゃぶしゃぶ&浜焼きレストラン」とは、「市場で買い物をする楽しさ」と、「しゃぶしゃぶしゃぶ専門店の食体験」を融合させたということ。まるで巨大な海鮮市場のように並べられた食材から、自分の好みのものを自由に選んで、好みのスープでしゃぶしゃぶを楽しむ。「買い物」「調理」「食事」を一体化した「体験型レストラン」。食材は、新鮮な海鮮、旬の野菜、ブランド和牛など150種類をラインアップしている。同店が優れているポイントとして、筆者は同店が「食べ放題にしていない」ことを掲げておきたい。これは同社が「海鮮ブッフェダイニング 銀座八芳」で経験しきたことを踏まえて、新しい提供方法を生み出したものと考えている。一般的に、料理や食材を大皿に盛り付けてお客に訴求する食べ放題レストランの場合、食材のロスが多いことが難点とされている。それは、盛り付けのボリューム感をお客に訴求している限り、盛り付けは常に十分なボリュームがあり、高い完成度を保つ必要がある。食べ放題の価格として1万円を超えて、2万円に近づくのは、「高級食材をふんだんに楽しむことが出来る」という付加価値も加わっている。そこで食べ放題レストランを利用する場合は、「高い入場料」を支払う必要がある今回の「海鮮市場 八芳」は、一律の入場料ではなく、お客が求めた食材ごとに価格設定がなされていて、会計はお客の食数を合算して支払うという仕組みになっている。食材の数は、全体で150種類。これがそれぞれ「300円」(税抜、以下同)、「500円」「1000円」「15000円」と4種類のプレートに分けられている。価格別の食材の内容は、以下の通り。・「300円」:鶏肉、豚肉、各種海鮮、野菜盛りなど・「500円」:牛肉、海鮮盛り、おすすめ食材など・「1000円」:和牛、特選海鮮など・「1500円」:活ロブスター、カニなど高級海鮮*仕入れ状況などによって内容が変更する場合もある食材の陳列は、「デザート」「野菜」からスタート「刺身」は1人前のポーションで提供「貝類」の品揃えが豊富、“活き”の状態で動いている「エビ」の陳列は、色彩でバランスよく配置している貝類のコーナーには水槽を設置して鮮度の高さをアピール「牛肉」の一皿は小さめのポーションで用意ドリンク類はリーチインクーラーで用意。一部の日本酒はダイナミックに演出選べる楽しさがあり、食事の金額をお客が決めるまた、同店では「鍋スープ」を選ぶことになり、全品500円で以下の「鍋スープ」がラインアップされている。・麻辣牛脂スープ・濃厚トマトソース・特製きのこスープ・本格酸湯スープ・お粥仕立てスープ・本格トムヤムクン・昆布としじみに和風だし・韓国風チゲスープなど、全13種類これら、「海鮮市場 八芳」の仕組みを整理すると、「セルフサービス」「食べた分だけ支払う」ということ。レストラン側では人件費が抑えられることから、その分食材にコストを掛けること出来る。お客にとっては、明瞭会計であり、食材も鍋スープもバラエティが豊富であることからリピートにつながる。このようが構図を描くことが出来る。同店の記者発表は、6月10日に行われた。発表に臨んだ、FUN DREAM COMPANYの米田幸男氏によると「客単価は5000円前後を想定している」とのこと。営業時間は11時から翌朝5時で、ランチ、アイドルタイム、ディナー、深夜と、あらゆる時間帯で利用される体制を整えている。筆者は、同社のダイナミックなレスランづくりの着想と顧客の創造について、これからも注目していきたい。客席数は400席と大規模で、ゆったりと構成している