エリアマーケティングGIS(地図情報システム)を提供する技研商事インターナショナル株式会社は、主要な歓楽街5エリア(すすきの、銀座、中区錦三丁目、北新地、中洲)における2019年と2025年(2024年10月~2025年9月)の夜間の人流変化を分析した調査レポートを公開した。分析の結果、若年層(20代)が夜の活動時間を前倒し、18時台に消費を集中させるという新しい行動様式が確認された。一方で、中年ビジネス層による深夜帯(22時以降)の人流減少は依然として深刻であり、「二次会」需要の構造的な縮小がうかがえる。アフターコロナ期における夜の歓楽街は、「若年層の早期集中」と「中年層の深夜離脱」という二極化に直面し、構造的に変化していることが示唆される。 分析概要・対象エリア:北海道・すすきのエリア/東京都・銀座エリア/愛知県・中区錦三丁目/大阪府・北新地/福岡県・中洲・対象期間:2019年1月~12月(以下、2019年)と、2024年10月~2025年9月(以下、2025年)のそれぞれ1年間で比較・時間帯:18時~25時・滞在時間:30分以上・集計方法:全人口推計値(日ユニーク)・分析軸:人流合計、年代別(20代〜70歳以上)、性別(男性・女性)、時間帯別(30分単位) 主要調査結果深夜帯の人流の減少率が最も顕著 — 歓楽街の活動時間短縮へほとんどのエリアで、人流減少が最も大きい時間帯は20時〜23時に集中。考えうる現象として、「一次会終了後の活動縮小」が挙げられる。また、すべてのエリアで60歳以上のシニア層の人流が2019年比で42%〜55%の大幅減少を記録しており、最も人流が失われた年代層となった。これは、単に感染リスク回避だけでなく、コロナ禍を経て「早寝早起き」「夜間外出の抑制」といった健康を最優先するライフスタイルがシニア層で定着した可能性を示唆している。「銀座の24時」で顕著な男性ビジネス層の深夜離脱二次会需要を牽引していると考えられる「男性ビジネス層(30代〜50代)」の深夜行動に、大きな変化が確認された。・銀座の深夜構造変化24時の時間帯で、男性の構成比が最大減少(-12.6pt)を記録。かつて接待や会食の後に残っていた男性ビジネス層の深夜人流が著しく減少している。若年層(20代)は夜の消費を「早期」に集中させる傾向に人流の減少が最も小さい(安定している)若年層でも、行動パターンに変化が確認された。・早い時間帯における20代比率の増加すすきの (18時) で20代の構成比が最大増加(+6.5pt)、銀座 (18時半) で最大増加(+6.2pt)している。若年層が夜間の活動を控えるのではなく、「終電前」や「夜の早い時間帯」に消費を集中させることで、深夜の活動時間を短縮していることが考えられる。本調査データのマーケティング活用について今回の調査結果は、例えば歓楽街でのビジネスにおいてマーケティング戦略の見直しに活用できる。分析により、「夜の歓楽街」の主要な収益源であった「二次会・三次会」の需要が構造的に縮小し、回復の見込みが低いことが示唆される。特にビジネス需要に依存していたエリア(銀座、北新地、中区錦三丁目)では、接待費の削減やリモートワークの普及により、このトレンドが加速していることがうかがえる。今後の歓楽街ビジネスにおいては、以下の戦略転換が求められると考えられる。・「早期集中」需要への対応若年層(20代)や安定層(30代・40代)が18時〜21時半に活動を集中させる傾向に合わせ、この時間帯の体験価値と単価を高める戦略が有効。・深夜営業の再定義22時以降は男性ビジネス層が離脱し、女性人流や比較的熱量の高い個人・グループ客が残る可能性がある。深夜時間帯は、大衆的な二次会ではなく、よりニッチで高付加価値な深夜カフェ、バー、アミューズメントなどの新たなコンセプトで客層を再獲得する余地がある。