『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。コストを抑えて加盟店の研修に力を入れる「アクトコミュニティ」の新しいFC本部の形その①――焼肉「肉のよいち」の仕組み第1回(この連載は計2回)「焼肉」と「うなぎ」はご馳走である。これは、外食として連想しやすい。この2つの業種で、いま躍進しているブランドが「肉のよいち」と「昼だけうなぎ屋」である。どちらも名古屋市に本拠を置く株式会社アクトコミュニティ(代表/柳瀬雅斗)がFCを主力に展開している。同社は2016年3月に設立。「肉のよいち」は2018年11月、名古屋・名駅に1号店をオープンし、現在27店舗(2025年10月末)。「昼だけうなぎ屋」は、店名どおり、飲食店のスペースで「昼だけうなぎ屋」を営業するという、いわゆる「シェアリングエコノミー」(具体的な内容は、第2回で説明)で、FC募集を公開して1年間で20店舗がオープンした。この2つのブランドの強さとはどのようなものか。代表の柳瀬雅斗さんの解説に筆者の体験を交えて論述していこう。日本が誇る食「焼肉」「うなぎ」を世界に広げたい柳瀬さんは1984年4月生まれ、愛知県出身。10代で経験したアルバイトで飲食業に親しんだ。22歳でイベント企画運営の経営に挑戦。25歳で独立し、ダイニングバーを開業するなど、飲食業を展開。2014年に創業。そして、前述した通り2018年11月「肉のよいち」1号店をオープンした。このブランドは「お米屋さんが営んでいる焼肉屋さん」というコンセプトで、「ご飯と一緒に食べる焼肉」をアピールし、FC加盟店を開拓していく。まず、柳瀬さんが焼肉店を展開することになったきっかけから伺った。アクトコミュニティ代表の柳瀬雅斗さん。独自にFCチェーンの仕組みをつくり上げてきた「これについて、後に当社の『うなぎ』の話も述べますが、私は元々海外に興味があって、『海外に日本の食を広めたい』という夢があります。これを逆算してみて、『では、海外に誇るべき日本の食とは何かと。そこで『焼肉』に挑戦しようと考えました。『うなぎ』についても同じ発想です。そして、2028年までに、『焼肉』も『うなぎ』も日本で100店舗を展開する。これが、当社の『第一章』です。『第二章』は、ここから海外で展開していくことです』では、なぜ「日本で100店舗」なのだろうか。「日本の国内でそれ以上出店すると、当社の『焼肉』も『うなぎ』もカニバリを起こしてしまうからです。そこで、国内で継続的に商売ができる店舗数は『100店舗』だと。東京、名古屋、大阪の大都市圏では10店舗、政令指定都市は5店舗、それ以外では2店舗を超えない。国内で店舗数を欲張ってはいけません。ですから、『300店舗を目指す』ということは、海外で行ないます」特に、「昼だけうなぎ屋」という店名の「うなぎ」のお店は反響がとても大きいという。同社では、コロナの中でこの業態を考えて、直営で1店舗を営業してきたが、いまからちょうど1年前(2024年10月)に加盟店募集を開始して、いま(25年10月)13店舗。年内に8店舗が決まり、30社が契約待ちです。そして、2026年の募集は年内に終了します」「これについては、『あの、名古屋で行列が出来る、昼だけしかやっていない、うなぎの店』という、共通言語が出来て、お客様の浸透しているのだと考えています。これが『名古屋発』となり、『大阪初出店』『東京初出店』となっているのですね」「ご飯と一緒に食べる焼肉」で稼働時間・客層が拡大「肉のよいち」のコンセプトは「お米屋さんが営んでいる焼肉屋さん」という、いわば「外食の王道」を感じさせる。なぜ、お酒と絡めたり、店舗の使い勝手をアピールしないのであろうか。「それは、これまでの焼肉屋さんとは、肉質、秘伝のタレとか、店舗デザインで差別化を図るところがほとんどでした。私は、そこに『それって、おいしく焼肉を食べることができるのか?』と、疑問を抱いたのですね。『おいしく焼肉を食べる方法』とは、諸説あると思いますが、私は『ご飯と一緒に食べる焼肉が一番おいしい』と考えました」「ご飯と一緒に食べる焼肉」をアピールして、ランチタイムからフル稼働する営業体制を築き上げたこのコンセプトは、柳瀬さんの狙い通りに新しい市場を発掘した。「ご飯と一緒に食べる焼肉が一番おいしい」という考え方はメニュー設計に十二分に活かされて、ランチタイムから充実した営業が出来る。筆者は都内の「肉のよいち」(加盟店)を体験したが、お昼時に20代30代の男女グループが、談笑しながら焼肉を楽しんでいた。「オンザライス」を、至る所で提唱して「ご飯と一緒に食べる焼肉」を定着させてきたこれまで夜だけ営業していた焼肉店と違って、営業時間が格段に長くなる。そこで、ロードサイドで営業して、地元のお客から遠方からのクルマ利用客に広がっていく。店舗の稼働時間も、客層も広がっていく。このような構造が顕在化していった。焼肉店の店づくりは重装備である。それによって新規にお店をつくるとなると投資額がかかる。これに対して、柳瀬さんはどのように望んだであろうか。「『肉のよいち』のモデル店舗は、30坪から40坪で、坪あたり家賃1万円が適正だと考えました。店舗は居抜きで、初期費用は2000万円。家賃と減価償却を合わせて、月あたり税込みで60万円以内に収まるように考えました。それが、初期費用5000万円くらいをかけた焼肉店は、たとえ家賃が低いといっても、減価償却費があることによって100万円くらいになります。そうなると損益分岐点が上がってしまいます」想定する客単価はどのようなものだろうか。「それは、ランチ2000円、ディナー4300円です。このディナーの客単価が4500円を超えると駄目だと考えています。いま、ロードサイドの焼肉店は、ダントツ1位が『食べ放題』です。ここに追随しているのが『和牛』をコスパよく食べることできる、昔からある個人店。ここには含まれない中途半端のところが、淘汰されているといった状態です。そこで、お子さんを含めた家族3人で来店して、1万円を超えないという設計です。大人の客単価ギリギリのラインが4300円なのです。」肉の盛り付けに独創性があり飽きさせない。画像は「大将タン元盛り合わせ」(1人前1098円/画像は2人前)店舗づくり・運営のコストを抑えて「研修」に力を注ぐこれまでの柳瀬さんの解説では、「肉のよいち」は初期投資、ランニングコストともに抑えているということ。その分、「食材」に原価を掛けている、ということなのだろうか。「当社の場合は、A5ランクの黒毛和牛を600円台で提供しています。スーパーなどは、100g2000円といったお肉がここの価格です。これは当社がお肉のバイヤーさんに銘柄指定を行わず、『A5ランクの黒毛和牛』ということだけを伝えて、仕入れをしていただいています。これによって、超お値打ちの価格設定で、たくさんの方々に毎日でも来店していただけるようなメニュー構成にしています」「ランチタイムから営業していますから、人件費もかかります。しかし、このような売り方によって、売上のアッパーラインが上がりますから、結果的に人件費率も家賃比率も下がります。普通、売上をつくるために、客単価を上げる仕組みを考えるものですが、当社が狙うのはお子さんを含めて4000円から4300円。これ以上の客単価になると、客離れが生じると考えていますから、焼肉マーケットにおける当社のポジションとして守っています」つまり、客単価を上げて売上を上げるということではなく、客単価を抑えることで、結果売上が上がる、ということであろう。そして、アクトコミュティが考える、お店のコスト構造について、このように述べた。「商品のクオリティもさることながら、当社では『研修』に力を入れています。初期投資やランニングコストを抑えているポイントはここにあります。いま、テーマとして掲げているのは『手仕込み』と『手もみ』です」「当社の場合、鮮度の高いチルドのお肉を店舗に届けて、店舗で『手仕込み』『手もみ』を行っています。こういうことは職人技ですが、これらの工程のすべてを数値化して仕組み化しています。職人技であっても『体で覚えろ』的なことはやっていません。ここで高いクオリティによって大きく差別化しています」そこで同社では、店舗のQSCを同社独自の覆面調査でチェックしているという。ここで赤点を取ったお店の人には、名古屋にある同社の研修施設で、再度研修を受けてもらう。この再研修には費用はかからないが、交通費・宿泊費は必要となる。このようにアクトコミュニティでは、店舗づくりや運営面でコストを抑えて、ここで生まれた利益を加盟店のクオリティアップにつなげている。次回は「昼だけうなぎ屋」にも言及するが、これがまた、よく考えられた業態設計なのである。(次回は、2月26日公開)