『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。「安売りしない」商品構成を保ちインフルエンサーでリピーター創造、飲食業界を革新するSNS発信を展開(全2回、その第1回)いま、東京・新橋の「ひまり商店」という居酒屋が繁盛店として知られるようになった。同店は2025年8月にオープン、45坪77席で月商2000万円前後を売り上げている。同店が繁盛しているポイントは、ずばり、クオリティの高いおつまみと、豊富な銘柄日本酒の品揃え。さらにフレンドリーでかつ丁寧な接客がリピーターを獲得している。もう一つ、同店を運営する株式会社Dazy(本社/東京都千代田区)の代表、林龍男(たつお)氏(愛称「はやたつ」)は、SNSの発信を熱心に行っていること。その内容は、お店の宣伝や情報開示だけではなく、「飲食業界を、共に素晴らしい業界にしよう」というメッセージが込められている。これらの発信は、「立ち上げの経験をしたい」「将来独立志望」「将来開業希望」の人に向けた内容で、対象者が明確になっている。このような「はやたつの世界」とはどのようなものか、2回にわたって紹介しよう。「インフルエンサーマーケティング」でお店が変わるDazyは、2021年10月、東京・神田に居酒屋「だるま酒場」をオープンしたことに始まる。2026年9月末現在は8店舗を擁している。同社代表、林龍男氏の沿革はざっとこうだ。林氏は1994月3月生まれ、群馬県出身。東京での学生時代に飲食業のアルバイトを重ねて「飲食業愛」を深めた。大学卒業後、専門商社に就職。その3年後「世界一の居酒屋繁盛店」で働こうと、検索してヒットしたドバイの「ZUMA」に転職した。会社の異動で「ZUMA」のアメリカ、オーストラリアのお店を経験するが、コロナが直撃したことで帰国を余儀なくされる。そこで、日本で飲食店を開業することを志し、そのための軍資金を貯め、2021年10月東京・神田に「だるま酒場」を開店した。林氏の故郷である群馬・高崎の『達磨』の『七転び八起き』の世界観をベースにして、林氏が奮闘していた当時は、18坪で月商450万円から500万円を売っていた、という。創業店舗は、林氏の生まれ故郷である高崎の「だるま」の想いを店内に凝集したそして翌2022年10月、溜池山王に2号店の「海老牡蠣酒場だるま」をオープン。ここから同社のもう一つの本題である「インフルエンサーマーケティング」に取り組むようになった。林氏はこう語る。「この店は16.5坪、客単価5500円。翌年の2023年1月、税抜きで月商2990万円、2月250万円、3月370万円と売っていました。この辺りから『インフルエンサーマーケティング』に気付くようになりました。これを手掛けたことで6月418万円となり、300万円後半の売上が安定するようになって、9月450万円、10月480万円、11月520万円、12月635万円となっていきました」「インフルエンサーマーケティングに気付いた」とは、どのように形にしていったのだろうか。「最初は、あるインフルエンサーの方が当店にいらして、当店のことをアップしてくださったことですね。ここで、この影響力を実感しました。この頃は、インフルエンサーマーケティングの営業が走り出した時代で、弊社としても、『何か施策を打たければ』と考えていました」「インフルエンサー選びは、彼らの動画の構成などを見て、影響力がありそうな方にダイレクトメールを送って1対1で交渉しました。『食事代プラスいくらの金額をお支払いするので、うちの店のことを取り上げていただけませんか』と」このような形で林氏は、インフルエンサーのそれぞれの動画の構成を検証し、どれほどの効果があったか、といったデータを貯めていった。こうして新しいお店を出すたびに、インフルエンサーのノウハウが充実していって、より精度の高い集客が出来るようになっていった。「ひまり商店」は開店して間もなく満席となる。お客から外食経験が豊富な雰囲気が漂う「集客」を一番の目的にして組み立てる林氏が目指す「飲食店ビジネス」において、最も重要なものはどのようなものか。「それは『集客』」と断言する。「『集客』とは二軸があります。それはまず、新規のお客様を集客すること。そして新規のお客様がリピーターになること。このリピーターの比率を高めていくことですね。私のSNS発信は、これに基づいています」「新規の方とは、まだ弊社の店の食事を食べたことがありませんから、『おいしそう』に見えること。これ大事です。そこに『金額』が付いてくる。ここで『コスパがいい』と感じていただけるか、ということですね」新規のお客がリピーターになっていくのは、初めてお店を訪ねたときの「顧客体験」が軸となる。それは「本質的な料理の味」であり、「ここちよい接客」によって決定づけられる。これらが来店頻度を高めていくための施策となる。これは、飲食業の必然である。 これらを遂行するために、飲食店はどのようなことをするべきか。これについて、林氏の考え方は明快だ。「ですから、現場の人は『お客様が歓ぶこと』だけを一生懸命考える。料理づくりもお酒の品揃えも、業者様と日々コミュニケーションをしっかりと取ることが重要です」これは、Dazyのお店を訪ねるとよく分かる。スタッフはみなきびきびと行動していて、表情豊かに接してくれる。居酒屋・日本酒ファンが好むフードを適格にラインアップしている「働く30代40代女性」に人気のポイントDazyでは、新橋の「ひまり商店」のことを、同社を象徴する店舗に位置付けるようになってきた。45坪77席と同社の中でも最も規模が大きく、コンセプトが明確に伝わってくる。メニューは、お酒にあうつまみが50品ほど、食材の取り入れ方、盛り合わせが良く映える。単品の価格は、500円から800円といったレンジで、客単価は5000円弱。オープン当初の月商は1700万円であったが、鍋が出る冬から今年の3月までは2000万円を売っていた。人気の銘柄日本酒を多数取り揃えて、飲み放題で提供しているドリンクは日本酒にフォーカスをしている。注目されるのは「飲み放題」。「プレミアム飲み放題、3300円」を設けていて、飲み放題の中に銘柄日本酒を20種類以上入れている。日本酒を愛飲する人にとっては、とても楽しい飲み放題である。こういう形で銘柄日本酒の消費量が増えることから、酒販店とも良い関係性が出来上がっていく。客層は30代から50代が主流で、働く女性の二人連れが目立つ。外食の経験値が高く、「このようなくつろげる場所がお気に入り」といった雰囲気が伝わってくる。 「ひまり商店」は2号店を2025年12月マロニエゲート銀座にオープン。今年の8月17日、丸の内永楽ビルディング地下のイーヨ‼にも出店した。また、定食業態の「出汁林」を今年の3月、渋谷東急プラザに出店した。こちらは客単価1500円あたり。このような形で、出店する業態は偏ることなく、さまざま形で展開していくという(次回は、10月22日に公開)代表の林龍男氏。居酒屋市場の綿密なマーケティングに余念がない