『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。コストを抑えて加盟店の研修に力を入れる「アクトコミュニティ」の新しいFC本部の形その②――うなぎ「昼だけうなぎ屋」の仕組み第2回(この連載は計2回)名古屋に本拠を置く株式会社アクトコミュニティ(代表/柳瀬雅斗)はFC主力で焼肉店「肉のよいち」と、うなぎ店「昼だけうなぎ屋」を展開している。前者は1号店以来7年間で全国27店舗(うち直営5店舗)と成長。また、ランチタイムのみに営業する『昼だけうなぎ屋』は2024年10月のFC募集公開1年で20店舗を超えるという勢いを見せている。前回は、代表の柳瀬雅斗さんへのインタビューから、「肉のよいち」の仕組みを紹介。今回は、「昼だけうなぎ屋」の仕組みを紹介する。これらのブランドの店舗展開は、これまでのFC本部の手法とは異なる試みを行っている。ここには、強いFCチェーンをつくる「いまどきの仕組み」が存在している。「シェアリングエコノミー」で生産性の基本つくるアクトコミュニティがいま力を注いでいる第2のブランド「昼だけうなぎ屋」は、店名通りに「昼だけうなぎ屋を営んでいる店」である。これが前述の通り急成長している。ここにこの業態をつくり上げた柳瀬さんのアイデアの力が存在している。このブランドはいかにして生まれたのだろうか。 「コロナになって、多くの居酒屋ではランチ営業を手掛けるようになりました。私も居酒屋を営んでいて、昼の売上をつくることを考えました。しかしながら、この分野では先駆者が存在するわけですから、私は『安易に取り組むべきではないのでは』と。そこで『世界に誇る、日本の食文化』を手掛けようと考えました。名古屋にいると、それは一択、『うなぎ』です」「『うなぎ』のマーケットは牛丼店の1000円と、個人店の3000円以上の二極になっていて、コロナの間に2000円のマーケットが拓かれるようになりました。この新しく生まれたマーケットは、関東焼きで、冷凍で、コンベクションオーブンを使用しています」「そこで私は、それとは異なる『2000円のうなぎ』を考えました。それは、ニホンウナギをチルドで届けて、お店では関西焼きの地焼きで提供する。職人技です。そこで、先の2000円とバリューは同じですが、味が全然違うのです。それを『シェアリングエコノミー』の業態として仕組みをつくっていきました」路面の店頭に置かれたA看板のメニュー一覧。「客単価2000円」という市場をつくり、高い利益率を誇る「シェアリングエコノミー」の意味を調べると、このようになっている。「個人が持つ、使っていないモノ(クルマ、家など)、場所(空き部屋、駐車場)、スキル(知識、時間)といった資産を、インターネットのプラットホームを通じて「共有(シェア)」することで、新たな価値を生み出す経済活動」では、「昼だけうなぎ屋」の仕組みは具体的にどのようになっているのだろうか。「『昼だけうなぎ屋』は、初期投資が150万円で、一般的な出店コストの10分の1です。家賃は半分、水道光熱費も半分。人件費も昼しか営業しないので半分です。このような形で全部コストダウンされるので、それを原価にのせていくという考え方です」「冷蔵庫は、現状の4ドアの1カ所だけ使用する。焼台は簡易的な稼働式のものを購入していただく。4万円程度で、設置型の10分の1程度のもの。これを営業時間中にダクトの下に置いて使用し、営業が終わったら片付けるという仕組みです」「『昼だけうなぎ屋』は、ランチタイムだけの営業ですから単価を取っていく必要があります。人件費がありますから、利益額を取っていかないと。例えば、現在の平均的なランチの価格は1200円となっています。これが原価率30%となると、利益額は700円です。『昼だけうなぎ屋』の客単価は2500円です。これが原価率50%かけたとしても、利益額が1200円となる。700円に対して1200円ですから、全然違いますね」ディナー帯にしゃしゃぶしゃぶ店を営む店内のデザインは「うなぎ」との親和性が高い一番目は「人材の育成」、二番目は「研修」アクトコミュニティの存在とは「FCチェーン本部」である。筆者がこれまで外食記者として見聞してきたFCチェーン本部の重要なポイントは、食材の調達力にあった。その役割を、加盟店に対する役割として、どのように果たしているのだろうか。「その順番として、整理して言うと、一番目は『人材の育成』で、二番目は『研修』です。この『人材の育成』に一番コストをかけています。当社の加盟店様には、担当者になる人の『人材の適正』が必要です。ですから、『このような人材を担当者にしてください』と伝えています。それは例えば、社長と2年以上一緒に働いている人材。このような人材を『当社がお預かりします』ということです」「当社では『職人の技』を数値化して、加盟店様にお伝えしていて、その仕事を担当する人は『覚悟』が必要となるのですね。これまで『飲食』の仕事をしたことがなくても、覚悟を持ってのぞむこと」「当社は加盟店様の事業領域を拡大するという立場です。加盟店様にはパチンコホールや不動産の方もいらっしゃいます。これらの中で、売上の高いところでは月商1000万円を超えているところもあります。『うなぎ』はテイクアウトも有力ですから、このようなお店も可能になるのですね」コロナ禍にあって、直営店1店舗で営業していた当時、たちまちにして長蛇の行列のできるお店となった本部と加盟店の関係性に培われる「共同体意識」「職人の技の数値化」に対して「覚悟が必要になる」というのは、定量的なものと定性的なことが同居しているような印象を受ける。これは具体的にどのようなことを意味しているのだろうか。「『昼だけうなぎ屋』では、当社で研修を受けると、串打ちを1500本行って、うなぎは3000尾を焼きます。これで大体1カ月間。技術の習得には個人差がありますから、長くかかる人は1カ月半になる場合もあります」「加盟店様にとっても『これは長い』と思われていることでしょう。『人材育成のために、こんなにコストをかけることが出来ない』と言われた場合には、『当社の加盟店になる必要はない』と、お断りしています。当社は『職人の技』を伝えているのですから」「当社では、このビジネスを全国に広げて行きたいと考えています。それを直営ではなく、フランチャイズで展開していくというのは、当社には全国すべての土地勘がありませんから。このような形で、店舗を展開していきます」「職人の技」を習得するための研修は1カ月以上に及び、クオリティの高さで差別化する本連載の第1回の「肉のよいち」では、店舗づくりや運営コストを抑えて、さらに、肉のクオリティを高く維持しながらノーブランドによって価格を抑える。そして、ここで生まれる利益を加盟店の「研修」に掛けるという内容だった。今回の第2回は、「シェアリングエコノミー」で店舗づくりや運営コストを抑えて、客単価の高い商品でテイクアウトなどの高い生産性を維持し、それをより強いものとするために、加盟店に「覚悟を持ってのぞんでもらう」という。これらのブランド育成に共通していることは、高いクオリティを維持して行くための「人材育成」である。このような「FCチェーン本部」と「加盟店」の間には、「共同体意識」が強固に培われていくのではないだろうか。