『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。ロードサイドの革命児「PISOLA」が描く、「豊かな外食」の再構築と日本の食文化を変える志の集団(3回連載:第1回)今回は「PISOLA(以下、ピソラ)」という外食企業のことを、3回にわたって論述する。ずばり筆者は、「『ピソラ』の存在感は、外食産業の世代交代」と、認識している。日本の外食産業は、「1970年」より始まったとされている。これは業界関係者にとっての「共通認識」である。一つは、1970年の日本万国博覧会(大阪)にアメリカの「KFC」が出店し、日本に初めて「ファストフード」という業態と、それを速いスピードで拡大していく「フランチャイズ」の仕組みが紹介されたこと。もう一つは、ファミリーレストラン「すかいらーく」1号店が、東京・府中インターの近くにオープンしたこと。「すかいらーく」は、消費者の憧れである高級レストランの洋食を「3分の1の価格」で設定して、ラインアップを豊富にした。トイレは様式の水洗トイレ、床は絨毯敷き、エアコンがついていた。顧客の多くは団地住まいで、「すかいらーく」の未来型で快適な外食空間に感動した。そして、大いに繁盛した。この「ファストフード」と「ファミリーレストラン」という2つの業態は、日本で立ち上がって以来、半世紀が経過した。そこで筆者は、この「ピソラ」の出現に、外食産業の世代が変わったということを認識している。「ファストフード」の「いま」については、別の機会に論述する。今回は、3回にわたって、「ピソラ」が日本の外食産業に及ぼす大いなる存在感について論述する。ただいまの記事、3回連載の第1回では、ざっくりと「ピソラ」とはどのような業態か、筆者の感動の想いを綴りたい。そして、「ピソラ」が醸し出す「感動」とは、日本の外食市場を変え得るのではないかと考えている。「脱・串カツ田中」と共に完全子会社化が発表筆者は昨年9月、串カツ田中ホールディングス(HD、現・ユニシアHD)が新しいアクションをするということをPRtimesで知り、がぜん興味を抱いた。それは、「脱・串カツ田中」宣言であり、「ピソラを完全子会社化する」ということだ。串カツ田中HDの貫代表は「まったく異なる事業が一緒になることで世界観が広がる」と述べたPRtimesでの公表によると「脱・串カツ田中」とは、このような内容であった。――当社は今後1000店舗体制に向けて、事業領域の拡大や日本から世界へ進出していくことを目標としています。そのために現状維持ではなく、商品やサービスの質の磨き上げや、プロフェッショナルな人材育成を推進し、串カツ田中を変革していかなければならなりません。さらに、串カツ田中に次ぐ、新たな挑戦・新しい価値を創造し、企業価値の向上を目指す必要があります。――そして「脱・串カツ田中」宣言の一環として「ピソラ」のことが言及されていた。――「ピソラ」の完全子会社化もそのためであり、「脱・串カツ田中」の「脱」というのは、「これまでの串カツ田中を超えていく」ということ。「串カツ田中に依存しない、新たな価値の創造」という両方の意味を指し、当社の決意表明でもあります。――2025年9月に発表された「脱・串カツ田中」は「新たな価値の創造」の決意表明串カツ田中HDによると、同社の貫代表が、「ピソラ」の存在を知ったのは、コロナがあけたころであった。日ごろ、知人から「ピソラのすごさ」を聞かされていて、「M&Aの話」がたくさんやってきているとも。そこで貫氏は「ピソラ」を体験することになる。そして、「串カツ田中が変わるために、ピソラが必要だ」と考えたのではないか。この件について、筆者は今年の2月末、貫氏にインタビューをする機会があった。貫氏はこう語った。「串カツ田中は串カツ屋さんです。ピソラはロードサイドのイタリアン。業態としてはまったく異なっているが、まったく異なっているからこそ、ピソラをグループ化することによって、串カツ田中の世界観が広がるのです」筆者は、串カツ田中HDが、新しく会社の方向性を形づくるために必要とした「ピソラ」とばどのようなものか、知りたくなった。同社のHPを見ると、私の家の近くに「戸田公園店」と「三郷店」があった。ファミリーレストランのルネサンス(復興)さて、1月のある金曜日17時ごろに、戸田公園店(埼玉県戸田市)を訪ねた。「楽勝で入れるだろう」と思ったが、ウエーティングがお店の外に溢れていた。その後、10分ほどで席に通していただくことが出来た。そこは、これまで見たことも、想像したこともないレストラン空間であった。天井は高く丁寧につくられたたくさんのランタンが天井を覆い尽くしていた。ほとんどの客席は半個室で、レースのカーテンで仕切られていた。客席は基本的にレースで仕切られた半個室で構成、ほかのお客とは目線が合わないセットメニューの構成で、ドリンクバーがついている。ドリンクバーはオープンキッチンの手前にあり、ライブ感が伝わってくる。ドリンクはフレッシュジュースがほとんどで、回転が速いのでフレッシュなクオリティが保たれている。注文は、QRコードを読み取ってスマホでオーダーする形。すると、出来上がりが速い。ピッツァ、パスタとも15分もかからない。雑誌の記者は「おいしい」とか「おいしくない」とか、定性的なことを言ってはいけないと思うが。ずばり、おいしかった。セットメニューのすべてにドリンクバーがついて、設置場所がオープンキッチンとつながって賑いを演出筆者がファミリーレストランの存在を知ったのは、青森から進学で東京に出てきて、学生時代の1980年あたり。このとき、世田谷区の芦花公園近くにあった「ロイヤルホスト」を初めて体験した。ここには心躍る楽しさが存在していた。お客のみんながそのような状態で、お店の中の全体に「ワクワクの空気感」が満ち溢れていた。――ながながと、50年ほど昔の、筆者にとっての「ファミリーレストラン原体験」を述べた。つまり、今年の1月、「ピソラ」戸田公園店を体験した瞬間に、半世紀昔のファミリーレストランでのワクワク感を思い出したのである。「ファミリーレストランが大きく発展した」のは、「消費者にとって楽しいところ」であったからである。しかしながら、今日の「ファミリーレストラン」とは、楽しい場所というよりも「便利な食事場所」と言った方がふさわしい。一方の「ピソラ」は、それとはまったく異なる。「ファミリーレストランのルネサンス(復興)」と言っていい。(次回は、7月23日公開)