ワタミ株式会社(本社/東京都大田区、代表取締役会長兼社長CEO/渡邉美樹、以下「ワタミ」)は、2024年10月25日に、国内で「Subway」(以下「サブウェイ」)事業を展開するためのマスターフライチャイズ契約を締結した。同時に、日本サブウェイ合同会社(SUBWAY JAPAN,G.K.、以下「日本サブウェイ合同会社」)の持分を取得し、同社を完全子会社化した。この記者発表は10月25日に都内ホテルで行われ、その記者発表の中でフランチャイザーであるSubway International B.V.との調印式も行われた。これから20年間で国内3000店舗を想定「サブウェイ」は1965年8月に米国コネチカット州で誕生したサンドイッチチェーンで、現在世界100以上の国と地域に3万7000店を展開している。特徴は、店内で焼成したパンの種類を選べること、フレッシュな野菜やさまざまな食材、ドレッシングなどをスタッフと対面で指示をしながらオリジナルな商品を組み立てることができること。これによってお客は「待たされている」という感覚を抱かない。日本におけるサブウェイは、1991年10月サントリーホールディングスが子会社として日本サブウェイ株式会社を設立。1992年米国のサブウェイ社とマスターフランチャイズ契約を締結し、直営店とフランチャイズ加盟店の両輪で国内展開を開始。2014年6月には国内店舗数が480店舗に達した。その後、サントリーは2018年3月に日本サブウェイの経営から完全に撤退した。2018年に株式会社から合同会社へ改組。直営店の整理を進めて、今回の契約時の段階で国内178店舗となっていた。渡邉氏によると、米国のサブウェイ本社が「日本でのパートナーを探している」という話を聞きつけたのは、いまから1年以上前のこと。その後、世界中の「サブウェイ」を見て回って「サブウェイしかない」と確信し、そこから入念に交渉を進めていったという。この確信にいたったポイントは以下の内容である。① 強いブランド力、世界のサブウェイ*世界3万7000店という世界最大のサンドイッチチェーン(ハンバーガーでは、マクドナルドが4万店、バーガーキングが2万店)。② ハンバーガーorサンドイッチの世界*同じファストフードであっても、いま大きな勢力となっているハンバーガーで戦わずに、ハンバーガーに対して選ばれる商品によってこれから展開をしていく。③ おいしい(ワタミのノウハウでもっとおいしく)*同社では和牛の焼肉店や有機野菜を生産するワタミファーム(後述)を展開し、食品工場のノウハウが存在している。④ 強い業態力(収益力)*ROI(総資本対営業利益率)が高く、投下資本に対する回転率が高い(2000万円の投資に対し6000万円)。⑤ 小商圏*6.5坪で出店が可能、駅ナカ、駅前、モール、郊外、病院、大学にも出店が可能。こうして、これから20年間で3000店舗の出店が可能だと想定した。 循環型6次産業モデルが支えグローバル戦略が進むワタミでは現在、再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルである「ワタミモデル」を推進している。これは、同社が展開する1次産業(生産:ワタミファーム、契約生産者)、2次産業(加工:ワタミ手づくり厨房)、3次産業(販売:外食事業、宅配事業)によってお客に商品を届けている。ちなみにワタミファームは、国内7カ所に530haの規模で有機野菜の農業・酪農を行っている。さらに、再生可能エネルギー事業として発電設備の開発・建設・運転管理などにも取り組み、グループ全体への100%再生可能エネルギーの電力供給を目指し、これらの活動を通じて、将来の持続可能で、持続可能でサスティナブルな社会の実現を目指そうとしている。このような取り組みを推進している中で、サブウェイがワタミグループに入ることの意義について、以下のことを掲げた。① 「ワタミモデル」の広がり*上記の、循環型6次産業モデルを推進していく。② 日本は円安が続く*インバウンド需要が高まり、これらに親しまれるグローバルなブランド。③ 既存業態のバックアップ*ワタミには店舗開発力が存在し、サブウェイによって仕入れ力が強化される。④ 世界FCオーナーとのつながり*世界3万7000店のオーナーとつながることで、日本の業態を世界に持っていくことができる(現状、フィリピンでワタミの店舗を23店舗経営しているオーナーが存在する)。⑤ ワタミブランドのチェンジ*ワタミが創業して40年間が経過し、当初の顧客は高齢者になった(いま「ワタミの宅食」が人気ブランドになった)。そこで、若者に人気のブランドにもう一度戻そうと。*「サブウェイ」は、ヘルシー、フレッシュで、女性や若者が好むブランドで、それに乗っていく。「居酒屋のワタミ」から「サブウェイのワタミ」へ。1兆円構想の中で国内3000億円の3分の2を占める国内3000店舗に向けた店舗展開の構想は、まず10年間で250店舗にすること。この間は、1年間で25店舗を展開(直営13店舗、FC12店舗)。その後は、FCを中心に年間150店舗を展開して、この構想を達成したいとしている。上記の、サブウェイがワタミグループに入ることの意義の中に、④「世界FCオーナーとのつながり」が存在するが、ワタミがグローバル市場を拡大する上で、とても有効ではないかと筆者は考える。同社では、和牛の焼肉店を海外で展開しているが、「サブウェイ」を展開する日本の会社ということで信用が高まり、拍車がかかることであろう。渡邉氏は「これからの大きな構想として、ワタミの売上高1兆円の中で、国内売上高は3000億円、このうちサブウェイは2000億円を占めているであろう」と述べた。さらに⑤「ワタミブランドのチェンジ」は、外食のチェーン化企業が持続可能性を考える上で今日非常に重要なテーマではないだろうか。日本では市場がシュリンクしていく懸念があるが、「ヘルシー」「フレッシュ」「女性が好む」というキラーコンテンツは持続可能性を維持していくことであろう。消費者はコロナ禍を経験したことで大きな行動変容がみられる。外食市場では、居酒屋業態の業績の回復が遅れているとか、食事業態が伸びているといった現象が顕在化している。ここで述べられた「居酒屋のワタミ」から「サブウェイのワタミ」へという「ワタミブランドのチェンジ」は、大胆かつ賢明な転換ではないか。来年の2月ないし3月までに東京の一等地にフラッグシップショップを出店して、ここからワタミオリジナルのメニューをラインアップしていくという。このようなワタミの動きは、日本の外食産業が大きく転換していくきっかけとなるであろう。