『フードパーパス』編集長の千葉哲幸が「いまどきの」繁盛店や繁盛現象をたどって、それをもたらした背景とこれからの展望について語る。ロードサイドの革命児「PISOLA」が描く、「豊かな外食」の再構築と日本の食文化を変える志の集団(3回連載:第3回)本連載は、ファミリーレストラン「PISOLA」(以下、ピソラ)のことを3回に分けて論述するものである。今回は、その第3回、最終回である。第2回では、ピソラが串カツ田中HD(現・ユニシアHD)とご縁が出来た沿革について論述した。今回は、串カツ田中HDからのM&Aに応えた背景について、そしてこれから、ユニシアHDの中で、どのように事業を展開したいと考えているのか、論述したい。上場直前期に舞い込んだ「完全子会社化」の話ピソラが串カツ田中HDのグループ化した背景について、そのきっかけをピソラ代表の鬼界友則氏は、このように語ってくれた。「あるとき、ピソラ設立に際して支援をしてくださった廣瀬(周栄)さんが神妙な表情をされて『相談したいことがある』と。そのお話とは、『串カツ田中HDの貫(啓二)さんが、ピソラに串カツ田中HDのグループに入ってほしいと言っている』ということでした」「このお話をいただいたとき、弊社は上場準備に入っていて、N-1期(=直前期)だったのですね。『頑張ったら、あと2年で上場できるよ』と、こんな状態でした」「そのM&Aの金額というのが、弊社が上場するときに目指している時価総額の金額と同じだったのですね。つまり、『2年後に、うまくいったら100億円になる』と。それがほぼ同等の95億円。さらに、M&Aで弊社が得たお金で、第三者割当で串カツ田中HDの株を購入させていただける、というお話でした」そこで、鬼界氏は「だったら、上場している状態とまったく変わらない」と考えるようになったという。ピソラとしても、上場した後の成長戦略として、「ピソラ」業態だけでは駄目なので、第二の業態を考えるとか、M&Aということも、絶対に必要不可欠になると考えていた。2026年5月1日より、新セットメニューを3タイプラインアップ。こちは「ライトセット」2人5498円(税込、以下同)「企業風土がまったく同じ」であることに気付くそして鬼界氏が、串カツ田中HDと交流するようになって、ピソラと串カツ田中HDの企業風土が「まったく同じ」ということに気付いたという。それはまず、創業オーナーが1店舗から立ち上げて、いまでも現役で事業に取り組んでいる。たくさんのプロパーが、役員や本部長クラスになっている。そして、若い社員が多い。それだけではなく、会計をはじめとして、外部からプロの方々を、しっかりとキャリア採用している。このような融合隊を編成していて、とても大きな規模になっている、と。「弊社がこのM&Aのお話を蹴って、自分たちだけ一本で上場したとします。それは確かに一つの達成感があるでしょう。しかしながら、弊社のビジョンである『日本中に、ピソラブランドを広げたい』とか、『ピソラだけではなくもっと大きな外食産業をつくっていく』というときに、M&Aの先がとても素敵な会社であれば、一緒になって、大きな複合体となって、さらに成長していくことが出来る。それは、とても素晴らしいことではないかと。そこで、M&Aのお話をお受けした、という次第です」筆者は、「ロードサイドにおけるピソラの存在感は、同じファミリーレストランである、『すかいらーく』に象徴される、1970年代に発祥したファミリーレストランとはまったく異なっている」という筆者の認識を述べて、これらとの差別化にどのように取り組んでいるのかを、鬼界氏に尋ねた。「私は1978年生まれで、従来型のファミリーレストランに消費者が感じていた世界観というものを、幼少期から成人に至るまで十分に体験していました。私が初めて外食に行ったのは、5歳か6歳のときですね。親から『今度の週末に、ファミリーレストランに行くよ』と言われると、楽しみでたまりません」「しかしながら、私が20歳ぐらいになったとき、低価格路線がそこら中に現れました。ドリンクバーと安いご飯で、24時間営業のお店が出来ていった。夜通し時間つぶしで過ごす場所といった感じでした」上の画像と同類の「レギュラーセット」2人3134円、ドルチェの内容を充実「スクラッチ」と「非日常的な空間」がポイントこれらの、1970年型のファミリーレストランの歩みを踏まえて、鬼界氏はいま、ピソラの方向性について、社内でこのように説いているという。「外食産業は1970年代に誕生した。消費者にとって、当初は煌びやかな存在であったが、チェーンストアとしての使命を追求していくことによって、いまのような形に変化したのだ、と。非日常であり、特別なものであった外食を、日本中に広げて、日本の外食、食文化を豊かにしたい。豊かさとは、価格を低くすることで、消費者が繰り返し利用することが出来る。そして、さまざまな業種業態によって選択肢が増えていった。『これが外食の豊かさだ』と、先輩たちは走ってこられた」「弊社は、このように「外食の豊かさ」が犠牲にしてきたことを、再構築する道を歩む、ということ。それは例えば、『スクラッチ』であり『非日常的な空間』です」筆者はこれを受けて、「ファミリーレストランが失ったものを復活させるために、どのような要素を取り入れていこうと考えたのか」と尋ねた。鬼界氏はこう語った。「一言で言うと、従来型のファミリーレストランとは、『期待通りの満足感』です。『ピソラ』の場合は、『クラフトレストランチェーン』というポジショニング。その定義は、『期待を超える』『ワクワク・感動』ということ」「『ピソラ』は、ファミリーレストランに『何を足したのか』ということではありません。われわれの原点は、バリ島で感動した五つ星のリゾートホテルとか、ミシュランにのるようなお店とか。上の世界にあるものを、手が届くという世界観に、いかにして近づけるか、という考え方をとっているのです」上の画像と同類の「スペシャルセット」2人6928円、アワビやフォアグラなどを選ぶことが出来るいま新たな「外食産業の幕開け」を迎えている筆者は「『クラフトレストランチェーン』を標榜して、店内スクラッチにしていることで、クオリティにばらつきが出ることに懸念はないか」と尋ねた。鬼界氏はこう語る。「それは、あります。それを解消するものは『マニュアル』しかありません。それは、『見て覚えろ』ではなく、定量的なもの」「ピッツァを例に挙げましょう。生地の発酵は、発酵機によって時間管理を行なう。生地を延ばすのは、手を〇のルートで〇回押す。淵の厚さは〇センチ、中は〇センチ。ピザ窯の温度を温度計で計る。ピザを〇の場所に置いて、その瞬間にタイマーを押して、〇秒経ったら、時計回りに〇度回す、と。こんな具合に、全部定量的に作業の手順をつくっています。最初はトレーナーがついて指導します。現場のOJTだけではなく動画を用意していて、『次の研修までに、30分間見てください』と。ここに30分間の時給を付けます」「でも、ブレは生じます。しかしながら、ブレを『遊び』という感覚で許容していると、どんどん大きくなります。ですから、絶対にブレてはいけない、という姿勢を崩さないようにしています」鬼界氏は、「ピソラ」に限らず、さまざまな業種の「クラフトレストランチェーン」が日本中に出来上がって切磋琢磨していくことを願っている。このような世界観が「日本の食文化を豊かにしていく」と鬼界氏は考えている。「ピソラ」は2026年5月末の段階で全国に70店舗となっている(うち、FC15店舗)。この速い出店ペースは、メガフラチャイジーが加盟店となっていることも要因である。鬼界氏は、こう語る。「加盟店のみなさんは、一様にこのようなことをおっしゃいます。『ピソラには、〇店舗出店可能なマーケットが存在する』と。弊社でも、『1店舗あたり、初期投資は1憶5000万円かかりますから、投資回収は安全を考慮すると7年くらいかかります」と。それでも、みなさん『やる!』とおっしゃる」このように、「ピソラ」に参画するメガフランチャイジーは、「ピソラ革命」を確信している。「ですから、『ピソラ』が繁盛しているのを見て、『とりあえず1店舗出したい』という会社様とは一緒にやりません。『ピソラ』によって、日本の食文化を豊かにするという志をつないでいきます」と鬼界氏は語る。筆者は、このように考える。「ピソラは改めて、『豊かな外食』の気づきをもたらした」と。そして、いま新たな「外食産業の幕開け」を迎えていると考えている。ロードサイドにおける「便利な外食」とは一線を画した「豊かな外食」が感じられる